栄養が豊富なイメージがあるほうれん草。
その「ほうれん草=栄養価バツグン」のイメージは正しいのでしょうか?
また、下茹でが必要なほうれん草、茹でたら豊富な栄養価は変わってしまうのでしょうか?
ほうれん草の栄養価を『生』、そして『茹でた』後の2通りから調べてみました。
ほうれん草の栄養価
ほうれん草の栄養価を表でまとめていきます。
※野菜類/ほうれんそう/葉/通年平均/生
<基本>ほうれん草の栄養価
まずは基本の栄養素の含有量です。
栄養素 | 100gあたりの含有量 |
エネルギー | 18kcal |
水分 | 92.4g |
たんぱく質 | 2.2g |
脂質 | 0.4g |
炭水化物 | 3.1g |
食物繊維 | 2.8g |
ほうれん草の基本の栄養価において特筆すべき点はありません。
ただ、食物繊維はそこそこ多めです。
ほうれん草(生)の食物繊維の内訳は
- 水溶性食物繊維:0.7g
- 不溶性食物繊維:2.1g
と不溶性食物繊維が豊富で、食物繊維全体の3/4を占めるという結果に。
<ビタミン>ほうれん草の栄養価
続いてビタミンの含有量です。
栄養素 | 100gあたりの含有量 |
βカロテン(ビタミンA) | 4200μg |
ビタミンB1 | 0.11mg |
ビタミンB2 | 0.20mg |
ビタミンB6 | 0.14mg |
葉酸 | 210μg |
ビタミンC | 35mg |
ビタミンD | 0μg |
ビタミンE | 2.3mg |
ほうれん草100gに含まれるβカロテンは4200μg。
よって、ほうれん草は緑黄色野菜です。
ほうれん草のβカロテンは量・食べやすさ両方の観点から考えてもトップクラス!
βカロテンは体内でビタミンAに変換される物質(プロビタミンA)。
高い抗酸化作用や目の保護、皮膚・粘膜の保護などに効果が期待できる栄養素です。
体内でビタミンAが不足すると目が見えにくくなる、などの症状を引き起こす可能性も。
摂りすぎる心配はないので、毎日、しっかり食事で摂ることを意識しましょう。
また、ほうれん草には葉酸やビタミンC、ビタミンE、ビタミンKなども多く含まれます。
<ミネラル>ほうれん草の栄養価
最後はミネラルの含有量です。
栄養素 | 100gあたりの含有量 |
ナトリウム | 16mg |
カリウム | 690mg |
カルシウム | 49mg |
マグネシウム | 69mg |
リン | 47mg |
鉄 | 2.0mg |
ほうれん草はミネラル類をバランス良く豊富に含みます。
特に豊富なのはカリウム。
100gあたり690mgは野菜の中ではトップクラス!
ほうれん草よりもカリウムを豊富に含む野菜はふきのとうやパセリなど、一度にたくさん食べづらいものばかり。
そのため、ほうれん草は最もカリウムを摂りやすい野菜と言っても過言ではありません。
カリウムにはナトリウムの排出をサポートし、むくみを解消する効果が期待できます。
体内の余分な水分を尿として排出させる利尿効果が高いので、トイレに行く回数が増えます。
さらに、カルシウム・マグネシウム・リン・鉄もそれぞれ豊富。
骨や歯の成分となるカルシウム・マグネシウム・リン、赤血球(ヘモグロビン)を作る鉄は、丈夫で健康な体作りに欠かせません。
特に鉄は妊娠中の女性は足りなくなりがちなので、ほうれん草など豊富に含まれる食べ物から効率的に摂ることが大切です。
また、吸収率が悪い鉄ですが、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率をアップさせることもできます。
鉄が豊富で、ビタミンCも多めに含まれるほうれん草は鉄分を効率的に摂れる野菜と言えますね。
茹でたほうれん草の栄養価
体に有害なアク(シュウ酸)を多く含むほうれん草は、調理前にアク抜きとして『下茹で』する必要があります。
アク抜きのためにほうれん草を茹でると、栄養価はどう変わるのか?
茹でたほうれん草と生のほうれん草の栄養価を比べてみました。
※野菜類/ほうれんそう/葉/通年平均/ゆで
<基本>茹でたほうれん草の栄養価
まずは基本の栄養価の含有量比較です。
栄養素 | 茹で | 生 |
エネルギー | 23kcal | 18kcal |
水分 | 91.5g | 92.4g |
たんぱく質 | 2.6g | 2.2g |
脂質 | 0.5g | 0.4g |
炭水化物 | 4.0g | 3.1g |
食物繊維 | 3.6g | 2.8g |
茹でたほうれん草は、生のほうれん草に比べ、基本の栄養価が全体的に増えています。
これは、茹でたことでほうれん草の水分が抜けた分の重量が減り、同じかさでも茹でたほうれん草の方が軽くなったためと考えられます。
同じ100gのほうれん草でも、茹でていないものと茹でたものでは、茹でたほうれん草の方が軽くなってしまうのですね。
同じ100gにするためほうれん草の量を増やすので、茹でたほうれん草の方が栄養価が総じて増加します。
ただし、茹でたほうれん草の方が減る栄養価もあります。
食物繊維の含有量をチェックすると
- 水溶性食物繊維:0.6g(0.7g)
- 不溶性食物繊維:3.0g(2.1g)
と水溶性食物繊維のみ0.1g減少しています。
水溶性食物繊維は文字通り『水に溶ける』食物繊維。
茹でるとゆで汁の中に溶け出してしまうため、量が減ってしまったのですね。
<ビタミン>茹でたほうれん草の栄養価
続いて、ほうれん草のビタミンの含有量を比較します。
栄養素 | 茹で | 生 |
βカロテン(ビタミンA) | 5400μg | 4200μg |
ビタミンB1 | 0.05mg | 0.11mg |
ビタミンB2 | 0.11mg | 0.20mg |
ビタミンB6 | 0.08mg | 0.14mg |
葉酸 | 110μg | 210μg |
ビタミンC | 19mg | 35mg |
ビタミンD | 0μg | 0μg |
ビタミンE | 3.1mg | 2.3mg |
ビタミンのうち、水溶性ビタミンはビタミンB群(B1・B2・B6・葉酸など)やビタミンCなど。
それらの栄養素はたしかに茹でた後の量が減っています。
しかし、βカロテンやビタミンEといった脂溶性(油に溶ける)ビタミンは量を増やしています。
かさが減る分、もともと量が多かったβカロテンが大幅アップしていて面白いですね。
<ミネラル>茹でたほうれん草の栄養価
最後にミネラルの含有量を比較します。
栄養素 | 茹で | 生 |
ナトリウム | 10mg | 16mg |
カリウム | 490mg | 690mg |
カルシウム | 69mg | 49mg |
マグネシウム | 40mg | 69mg |
リン | 43mg | 47mg |
鉄 | 0.9mg | 2.0mg |
ミネラルのうちカリウムは水に溶けやすい栄養素で、茹でる前・茹でた後では200mgも量が減っています。
カリウムの水に溶けやすいという性質は、腎臓に疾患がある方の食事ではわざわざ茹でたり、水にさらしたりする工程を入れるほどです。
また、ナトリウム・マグネシウム・リン・鉄もそれぞれ減少。
一方でカルシウムは増加しています。
栄養を減らさない!ほうれん草の茹で方とは
茹でる前(生)と茹でた後のほうれん草の栄養価を比較すると、
- 水溶性食物繊維
- ビタミンB群
- ビタミンC
- ナトリウム
- カリウム
- マグネシウム
- リン
- 鉄
といった栄養素が減少してしまうことが分かりました。
これら水溶性の栄養素の流出をできるだけ抑える方法をまとめていきます。
茹でる前にカットしない
ほうれん草を切ってから茹でると切った断面から栄養が流出しやすい状態に。
栄養の流出を極力抑えるなら、そのまま茹でるのがオススメです。
また、カットしてから茹でるとビチャッとした水っぽい仕上がりになりがち。
土汚れがひどい場合は生のうちにカットしてしっかり洗いたい!と思ってしまいますが、そのままの状態でできるだけ汚れを落とし、茹でた後に土を落とすようにしましょう。
茹で時間を短めに
茹でる時間が長ければ長いほど、栄養素は流出してしまいます。
そのため、下茹での茹で時間はできるだけ短めに。
ビタミンCの残存率の研究では「3分間茹でるとビタミンCが半減する」という結果も!
おひたしや和え物など下茹でしてすぐに使う場合は1分ほど、下茹で後に加熱料理に使う場合はしんなりしたらすぐに取り出してOKです。
水にさらす時間を短く
ほうれん草の下茹ででは、茹でた後に冷水に取り出します。
その冷水の中で熱を取る時間をできるだけ短くするのも栄養素の流出を防ぐポイント。
茹でるだけでなく水にさらす時間でも栄養素はどんどん水に溶けてしまいます。
水にさらす行程は手早く、冷めたら軽く水気を絞りましょう。
茹でずに電子レンジでもOK
ゆで汁に栄養素が溶け出す下茹でよりも、栄養素の流出が少ないのが電子レンジでのアク抜き。
電子レンジで加熱し、水に取るので洗い物も少なく、時短です。
ただ、ほうれん草のアク(シュウ酸)は水に溶ける成分ですが、加熱しただけでは抜けてくれません。
そのため、電子レンジでの加熱後にも水にさらす必要があります。
アクをしっかり抜くためには水にさらす行程が重要。
しかし、水に浸けすぎると栄養素がドバドバ流れてしまうので、やはり手早く行うことがポイントですね。
ほうれん草の栄養素を守るには『長い時間水に浸けない』ことが大切ですね。
ここまで、ほうれん草の栄養価を生・茹でた後の2通りからご紹介しました。
ほうれん草の豊富な栄養を効率よく摂るためにも、茹ですぎない・水にさらしすぎないというアク抜きを心がけたいですね。