ゼリーの凝固剤として使用される「ゼラチン」と「寒天(かんてん)」。
何となく使い分けている、という方も多いのでは?
そんなゼラチン・寒天の違いをまとめました。
【原材料】ゼラチン・寒天の違い
ゼラチンと寒天の原材料の違いです。
ゼラチンの原材料
ゼラチンの原材料はコラーゲン由来のたんぱく質です。
そもそも『コラーゲン』とは、牛や豚などの動物の骨・皮に含まれる成分。
ゼラチンはこのコラーゲンに熱を加え、抽出されたものとなります。
つまり、ゼラチンは動物性たんぱく質が主原料となります。
寒天の原材料
寒天の原材料はテングサ・オゴノリという紅藻類の海藻です。
これら紅藻類の海藻を煮込み、出た粘液を固め、凍結してから乾燥させたものが寒天となります。
ちなみに、海藻を煮込んで固めただけの段階は『トコロテン』。
つまり寒天はトコロテンを凍結し、乾燥させ水分を抜いたものとなります。
紅藻類の海藻を煮込んで出た粘液の主成分はアガロースなどといった食物繊維。
よって、寒天の主原料は植物性の食物繊維となります。
ゼラチン・寒天の「原材料」の違い
ゼラチン・寒天の原材料の違いです。
- ゼラチン
- 原材料:コラーゲン
- 作り方:加熱により抽出
- 主成分:動物性たんぱく質
- 寒天
- 原材料:紅藻類の海藻
- 作り方:煮込んで出た粘液を固めて凍結、乾燥させる
- 主成分:植物性の食物繊維
一目で分かる、表でもまとめてみました。
ゼラチン | 寒天 | |
---|---|---|
原材料 | コラーゲン | 紅藻類の海藻 |
製法 | 加熱して抽出 | 煮込んで出た粘液を固めて凍結、乾燥させる |
主成分 | 動物性たんぱく質 | 植物性の食物繊維 |
【栄養価】ゼラチン・寒天の違い
ゼラチン・寒天の栄養価の違いを表にして比べてみます。
- ゼラチン: 肉類/<畜肉類>/ぶた/[その他]/ゼラチン
- 寒天:藻類/てんぐさ/粉寒天
いずれも『粉末状』のゼラチン・寒天100gあたりの数値となります。
<基本>ゼラチン・寒天の栄養価を比較
ゼラチンと寒天の基本の栄養価です。
栄養素 | ゼラチン | 寒天 |
---|---|---|
エネルギー | 347kcal | 160kcal |
水分 | 11.3g | 16.7g |
たんぱく質 | 87.6g | 0.2g |
脂質 | 0.3g | 0.3g |
炭水化物 | 0g | 81.7g |
食物繊維 | 0g | 79.0g |
けっこう、というか全然違いますね。
まず、エネルギーですが、ゼラチンは347kcalに対し、寒天は160kcalと、ゼラチンの方が2倍以上カロリーが多いという結果に。
寒天=低カロリーというイメージがありましたが、確かに寒天の方が低カロリーでした。
そして、大きな差が出たのはたんぱく質と炭水化物・食物繊維。
このたんぱく質と炭水化物・食物繊維をそれぞれ掘り下げていきます。
ゼラチンと寒天のたんぱく質
ゼラチンは主成分がコラーゲン由来のたんぱく質。
そのため、ゼラチンにはたんぱく質が100gあたり87.6g、つまり90%弱も含まれます。
水分は100gあたり11.3gと、たんぱく質以外はほとんど水分となりました。
また、寒天に含まれるたんぱく質は0.2gとわずかでした。
ゼラチンと寒天の炭水化物・食物繊維
ゼラチンには炭水化物が含まれません。
よって、炭水化物を構成する成分の1つである食物繊維も含まれません。
一方で、寒天の主成分は食物繊維です。
寒天には100gあたり81.7gの炭水化物が含まれ、そのうち食物繊維は79.0g、つまり全体の79%が食物繊維です。
<ビタミン>ゼラチン・寒天の栄養価を比較
ゼラチン・寒天ともにビタミンはほとんど含まれていないため、表は割愛します。
<ミネラル>ゼラチン・寒天の栄養価を比較
ゼラチンと寒天に含まれるミネラルです。
栄養素 | ゼラチン | 寒天 |
---|---|---|
ナトリウム | 260mg | 170mg |
カリウム | 8mg | 30mg |
カルシウム | 16mg | 120mg |
マグネシウム | 3mg | 39mg |
リン | 7mg | 39mg |
鉄 | 0.7mg | 7.3mg |
ミネラルの数値は、ナトリウム以外、ゼラチンよりも寒天の方が多く含まれていますね。
特に、寒天はミネラルがバランス良く含まれ、特にカルシウム・鉄が豊富に含まれているのがポイント!
ゼラチン・寒天の「栄養価」の違い
- ゼラチン
- 全体の90%弱がたんぱく質
- カロリーは寒天の2倍以上
- ミネラルは含まれるが少なめ
- 寒天
- 全体の80%弱が食物繊維
- カロリーはゼラチンの半分以下
- ミネラルをバランス良く含む
- カルシウム・鉄が豊富
ゼラチンは「たんぱく質」、寒天は「食物繊維」が主成分ということが栄養価からハッキリ分かりましたね。
【固まる・溶ける温度】ゼラチン・寒天の違い
ゼリーを固める「凝固剤」として使われるゼラチン・寒天。
そんなゼラチンと寒天の固まる・溶ける温度の違いをまとめます。
ゼラチンが固まる・溶ける温度
ゼラチンが固まる温度は20℃以下です。
ただし、ゼラチンは約30℃から溶け始めるため、固めるときは冷蔵庫へ入れる必要があります。
夏場では室温でも溶けてしまうため注意が必要ですね。
また、ゼラチンを溶かす温度は50℃前後がベスト。
ゼラチンは60℃以上だとたんぱく質が変質し、上手く固まらなくなる可能性があります。
※一部商品は『80℃以上で溶かす』ものもあるため、使用する商品のパッケージを確認しましょう。
寒天が固まる・溶ける温度
寒天が固まる温度は40℃以下です。
つまり、寒天は室温でも固まります。
また寒天が溶ける温度は90℃以上となります。
しっかり沸騰させたお湯でないと寒天は溶けず、冷ましたときにしっかり固まりません。
ゼラチン・寒天の「固まる・溶ける温度」の違い
ゼラチンと寒天の固まる・溶ける温度の違いを表でまとめました。
温度 | ゼラチン | 寒天 |
---|---|---|
固まる温度 | 20℃以下 | 40℃以下 |
溶ける(溶かす)温度 | おおむね50℃前後 | 90℃以上 |
ゼラチンは沸騰させたお湯じゃなくても溶け、冷蔵庫じゃないと固まらない。
寒天は沸騰させたお湯ではないと溶けず、室温でも固まる。
溶ける・固まる温度はゼラチンと寒天で大きく異なることが分かりましたね。
【料理法】ゼラチン・寒天の違い
ゼラチンと寒天の料理法の違いです。
ゼリーにしたい飲料に対するゼラチンの割合や、料理工程についてまとめます。
また、加えると固まらなくなる食材についても比べていきます。
ゼラチンの料理法
ゼラチンの割合
ゼラチンは、ゼリーにしたい飲料に対し2%の量を目安に使用します。
作りやすい量を例にすると、飲料250mlに対し、ゼラチンは5gが目安です。
ゼラチンの料理工程
ゼラチンは50℃(商品によっては80℃)前後に温めた飲料に直接加えることができます。
商品によってはふやかす工程が必要ですが、現在のお菓子作り用の家庭用ゼラチンならほぼ不要。
よく混ぜて、ゼラチンを溶かし、容器に入れたら冷蔵庫で冷やし固めて完成です。
ゼラチンが固まらなくなる食材について
ゼラチンは
- たんぱく質分解酵素が含まれるフルーツ
- 酸味が強いフルーツなど
を加えると固まらなくなる可能性があります。
寒天の料理法
寒天の割合
寒天は、ゼリーにしたい飲料に対して1%の分量が目安です。
作りやすい量を例にすると、寒天5gに対し、飲料は500mlほどが目安となります。
寒天の料理工程
寒天は水またはゼリーにしたい飲料と混ぜてから火にかけ、2~3分ほど沸騰させる必要があります。
しっかり沸騰させないと寒天が溶けず、ゼリーとしてちゃんと固まりません。
寒天をしっかり溶かしてから粗熱を取り、容器へ入れて冷やし固めます。
冷蔵庫に入れなくても室温で固まる寒天ですが、冷蔵庫へ入れた方が美味しく仕上がります。
寒天が固まらなくなる食材について
寒天は酸味が強い食材と混ぜると固まりにくくなります。
レモン汁や100%オレンジジュースなど、柑橘類です。
寒天の固まる力は酸に弱く、酸が強いこれらの食材をいっしょに煮立ててしまうと冷やしても固まらない可能性があります。
ゼラチン・寒天の「料理法」の違い
ゼラチン | 寒天 | |
---|---|---|
飲料に対する割合(目安) | 2% | 1% |
沸騰させること | 不要 | 必要 |
避けるべき食材 | たんぱく質分解酵素を含むフルーツ 酸味が強いフルーツ | 酸味が強い食材(フルーツ) |
ここまで、ゼラチンと寒天の違いをまとめました。同じゼリー作りに必要な材料ですが、こうして調べてみると全然違うことが分かりました。
ゼリー作りにゼラチンや寒天を使用するときは、それぞれの特性を知った上で活用しましょう!