5月5日のこどもの日に食べられる『ちまき』。
この葉っぱに包まれたごはん、というイメージのちまきですが、実際はどんな食べ物なのでしょう?
また、どうしてちまきはこどもの日に食べられるのでしょうか?
今回はそんなちまきについて、ちまきがこどもの日に食べられる理由をまとめてみます。
子どもの健やかな成長を願い、母親への感謝を伝える日。
『端午の節句』の伝統から、男の子お祝いの日というイメージが強いものの、こどもの日の「こども」は男女どちらも、性別は関係ない。
こどもの日にはこいのぼりや兜、五月人形を飾ったり、柏餅を食べるという風習がある。
ちなみに、同じ日ですが『こどもの日』は国民の祝日、一方『端午の節句』は伝統の年中行事という違いがあります。五節句の1つである端午の節句に祝日を制定したというのが『こどもの日』の由来です。
『ちまき』とはどんな食べ物?
ちまきとは餅などを葉で包んだ餅菓子です。
ちまきは漢字では「粽」と表記され、少なくとも奈良時代には日本に伝来したとされています。
また、930年ごろには宮中で食べられていたことが文献により確認されています。
900年ってことは平安時代か・・・。ちまきは1000年以上も前から食べられていた伝統的な食べ物なんだね。
ここからは、ちまきの餅(中身)・葉・形・加熱方法についてそれぞれ掘り下げていきます。
ちまきの餅(中身)について
ちまきの餅、つまり食べる部分は米類が入れられます。
具体的には
- 餅
- もち米
- うるち米
- 米粉
- おこわ(もち米を炊いたもの)
- 団子
と、ちまき一つとっても中身は多岐に亘ります。
わたしは「ちまき=おこわ」のイメージが強いです。
ちまきの葉について
ちまきに使われる葉は笹の葉が主流です。
ただし、日本に伝来した頃は茅(チガヤ)という植物の葉で包んでいました。
また、笹や茅だけでなく、竹の皮、ワラなどで包むこともあります。
さらに、包んだ葉を縛って固定するためにはイグサが使用されています。
イグサは畳の原料だよね。食べ物にも活用されているなんて知らなかった!
包むのに笹の葉を使用した理由
ちまきにおいて、餅orもち米を包むのに笹の葉を使用したのは保存性を高めるためです。
笹の葉には防腐作用があり、ごはんなどを包むことで保存食として活用できるようになりました。
また、同じように笹の葉で包まれた料理として鱒寿司(ますずし)も有名ですね。
笹の葉で食材の包むのは、冷蔵庫など食品の保存が難しかった時代の知恵だったのです。
ちまきの形について
ちまきの形は三角形や円錐形です。
三角形のものはおにぎりのようにキレイな形、円錐形は細長いクラッカーのような形です。
また、地域によっては長方形に包むものもあります。
ちまきの中身は形によって異なることが多く、おおむね
- 三角形:おこわ
- 円錐形:甘い団子
- 長方形:灰汁巻き(あくまき)
と形によって分類されます。
ちまきの加熱方法について
ちまきの加熱は
- 蒸し上げる
- 灰汁で茹でる
という2種類の方法があります。
「蒸し上げる」は、生のもち米と甘辛く味付けした椎茸・たけのこなどの具材を葉で包み、蒸し器で蒸し上げるという方法です。
つづいて「灰汁で茹でる」は、生のもち米・竹の皮を灰汁に漬けておき、竹の皮でもち米を包んだ後もさらに灰汁で茹でるという方法です。
灰汁に漬け、さらに茹でるのは保存性を高めるため。
灰汁の匂いとえぐみ、粒が残っていながらモチモチした食感が何とも独特で、好き嫌いが分かれる味わいと言われます。
また、ちまきには「加熱しない」甘い団子もあります。
この甘い団子のちまきは、同じくこどもの日に食べられる柏餅の代わりとして西日本を中心に食べられているものです。
名前は同じ「ちまき」ですが『米類を葉で包む』ということ以外はけっこう違いがありますね。
- 蒸し上げる(中華ちまき):関東~東北、新潟など
- 灰汁で茹でる(灰汁巻き):南九州(鹿児島・宮崎・熊本)
- 加熱しない(甘い団子):西日本
なぜちまきをこどもの日に食べるの?
ちまきをこどもの日に食べるのは中国の故事に理由があります。
約2300年前の中国の楚に屈原(くつげん)という政治家・詩人がいました。
屈原は王の側近を務めるほど優秀な人物でしたが、それを妬んだ人物の陰謀により失脚。
さらに楚から追放されるなど苦難が続き、ついには祖国の行く末に絶望し、自ら川に身を投げ死んでしまいます。
屈原の死は、屈原を慕う多くの民衆に悔やまれました。
そんな屈原の無念を鎮めるために、供養として川にもち米を投げ入れるように。
ただ、当時の川には竜が住むと信じられていて、そのまま流しては竜がお供え物を食べてしまうと考えられていました。
そこで竜が嫌いな『楝樹(れんじゅ)の葉』でもち米を包み、さらに邪気を払う5色の紐で縛ってから川に流すようになります。
その「もち米を葉で包み、紐で縛ったお供え物」がちまきの原型です。
そんな屈原が川に入水自殺した日が5月5日でした。
国を憂い命を絶った屈原にちなみ、ちまきは『忠誠心が高い人』の象徴と見なされるように。
そんな忠誠心のある素晴らしい大人に育って欲しい、という意味が込められ、5月5日にちまきがたべられるようになったといわれています。
「ちまき=こどもの日」は関西特有?
ここまで「ちまきをこどもの日に食べる理由」についてまとめてきました。
けれども、ちまきをこどもの日に食べるのは関西特有の風習とされています。
関東出身・在住のわたしは、知識として何となく知っていたものの、実際にちまきをこどもの日に食べたことはありませんし、見たこともありません。
「ちまき=こどもの日」が関西特有なのは、この風習が日本に宮中文化として取り入れられたためといわれています。
ちまきが日本に入ってきたのは奈良時代で、端午の節句の風習の1つとして日本に伝来しました。
平安時代には風習として食べられていることが確認されています。
その頃の都は奈良や京都など関西方面です。
そんな都のお膝元である関西地方では、伝統として浸透し現在も親しまれています。
一方、関東地方には文化として根付かず、江戸時代から柏餅が一般的に広まりました。
そのため、関西ではちまき、関東では柏餅、とこどもの日に食べる行事食が異なっているのです。
まとめ
- ちまきは餅・もち米などを葉などで包み、蒸すor茹でた食べ物
- 日本では地域によって中身・葉・形・加熱方法が異なる
- こどもの日に食べられる理由は、屈原の命日に食べられるようになったという中国の故事による
今までほとんど知らなかった「ちまき」について調べると、興味深いことが次々と明らかになりました。
ちまきについて知り、日本の伝統や風習について、改める考えるきっかけにもなりましたね。
今まではなじみがなかったという方も、今年のこどもの日はちまきを食べてみてはいかがでしょうか?