春の味覚・筍(たけのこ)は食べる前にアク抜きをする必要があります。
なぜ筍はアク抜きをしなければならないのでしょうか?
筍のアクの正体とアク抜きの方法をお伝えします。
筍のアクの正体
筍のアクの主成分は「シュウ酸」と「ホモゲンチジン酸」です。
この2つの成分について、それぞれ詳しく掘り下げます。
シュウ酸とは?
シュウ酸とはいわゆる「灰汁(アク)」の成分です。
筍の他にも、ほうれん草や里芋、生姜など身近な食材に含まれます。
このシュウ酸には過剰に摂取すると結石のリスクを上げるというデメリットがあります。
結石とは体内のうち器官・管にて作られる石のように固い物質で、尿路結石(尿管結石)が有名ですね。
尿路結石は一般的に「死ぬほど痛い」と言われるほどの激痛を伴うそうです。
シュウ酸は水溶性の物質なので、下茹でなどの茹でこぼし作業を行うことで含有量を減らすことができます。
また、シュウ酸にはカルシウムと結合するという特徴もあります。
つまりカルシウムが豊富な食品といっしょに摂ることで、体内への吸収を抑え、体外への排出を促すことにもつながります。
ただ、シュウ酸がカルシウムと結合してしまう分、体内で使われるはずだったカルシウムの量が減ってしまうため、カルシウムの働きを鈍らせるというデメリットも持ちます。
ホモゲンチジン酸とは?
ホモゲンチジン酸はフェニルアラニン及びチロシンという成分の代謝中間体の1つです。
※代謝中間体とは、代謝による物質変化のうち終産物になるまえの中間段階の物質のこと。
筍にはこのうちアミノ酸の一種である「チロシン」という成分が含まれます。
このチロシンはアミノ酸の一種であり、うま味成分の1つでもあります。
市販の筍などに付着している白いツブツブの正体、実はこのチロシンです。
あのツブツブはアミノ酸の一緒なので体に害はありません。
しかし、チロシンは酵素により変化するとホモゲンチジン酸になってしまいます。
シュウ酸・ホモゲンチジン酸を抜く理由とは?
筍のアクの主成分であるシュウ酸・ホモゲンチジン酸を抜く理由はエグ味が強いからです。
エグ味とは不快な苦さを感じさせる味のこと。
コーヒーのような香ばしい苦味ではなく、思わず「うえっ」と吐き出してしまうような、舌にへばり付くような不快感を与える苦味です。
特にホモゲンチジン酸は、時間が経てば経つほどチロシンから変化していくため、放置しているとどんどんえぐみが増します。
筍は手に入ったら「すぐに」アク抜きを開始するのがオススメです!
筍のアク抜き方法
筍のアク抜きは、使用する材料により「米糠(こめぬか)」と「重曹」の2種類の方法があります。
そんな筍のアク抜き方法2種類をそれぞれ紹介します。
【基本】「米糠」を使用する筍のアク抜き方法
米糠を使用する方法は筍のアク抜きの基本と言えます。
そもそも米糠とは、お米を精米し白米にするときに取り除く皮などの部分で、糠を取り除かないお米は玄米と呼ばれます。
糠漬けの作る糠床の材料でもありますね。
用意するもの
- 皮付きの筍:2~3個
- 米糠:1カップ
- 赤唐辛子(鷹の爪):1本
米糠の他に赤唐辛子を入れる理由は、赤唐辛子に含まれる辛味成分・カプサイシンに防腐作用があるため、といわれています。
しかし、エグ味を取り除くというアク抜きそのものには関係ないので用意できなくても大丈夫です。
また、筍・米糠・赤唐辛子を入れて茹でるための「大きな鍋」も用意が必要となります。
茹でる前の下処理
- 根元の固い部分・穂先5cmほどを切り落とす
- どちらも硬くて食べられないため
- 筍の縦に切り込みを入れる
- 火の通りを早くするため
- 内側の皮のみを残し、外側の厚い皮は剥く
筍の茹で方
- 鍋に筍とかぶるくらいの水、米糠、赤唐辛子を入れる
- 強火にかけ、沸騰したら落とし蓋をする
- 筍が水面から顔を出さないよう注意
- そのまま弱火で40分以上茹で続ける
- 目安は1時間ほど
- 竹串が根元にするっと入るようになったら火を止める
- お湯が冷めるまで、そのまま半日ほど放置する
- 鍋に入れたまま冷めるまで置く「湯止め」という工程です
落とし蓋をする理由は、筍が水面から出てしまうと変色してしまうため。
また、湯止めは筍からアクを出し切るために行います。
じっくり時間をかけて行うのが望ましく、すぐ水に取ったり、流水にさらして冷ましたりはやめましょう。
湯止めは半日ほどが1つの目安で、時間があるなら一晩中鍋の中で置いておくのが確実ですよ。
筍の洗い方・切り方
- お湯が完全に冷めたら、筍を取り出す
- 水で筍に付いた米糠を洗い流す
- 茹でる前に入れた切れ目に指を入れ、皮を剥く
- 皮の間に米糠が溜まりやすいためよく洗う
- 触ってみて固い部分は切り落とす
- 縦半分に切ってから、保存しやすいように切り分ける
- 保存容器に筍を入れた後、浸るほどの水を入れ蓋を閉め、冷蔵庫に入れる
水は最低でも毎日は替え、一週間以内に食べきりましょう。
もし、食べきれない場合は細かく切って冷凍するのも1つの手。
またあらかじめ出汁で煮ておくことで、使い勝手が良くなります。
「重曹」を使用する筍のアク抜き方法
米糠がない場合、わざわざ米糠を買いたくない場合は、比較的リーズナブルに手に入る「重曹」を使ってもアク抜きはできます。
重曹とは炭酸水素ナトリウムのことで、名前の重曹は「重炭酸曹達(ソーダ)」の略。
食品への使用はもちろん、家中の掃除にも使用できる安全性と使い勝手の良さが何よりの特徴ですね。
掃除用ではコンロの油汚れなど酸性の汚れ落としに効果が期待できます。
用意するもの
- 皮付きの筍:2~3個
- 重曹:量の目安は「水1リットルに対し小さじ1杯」
- 赤唐辛子:1本
赤唐辛子はあってもなくてもどちらでもOK。
また、やはり筍がしっかり入る大きめの鍋を用意しましょう。
ただし1つ注意点が。
重曹の入れすぎは厳禁!違うエグ味のもととなるので避けましょう。
少なすぎてもアクが抜けきらないので、分量をしっかり計るのが大切ですね。
アク抜き工程(米糠使用時との違い)
重曹を使った筍のアク抜き方法は、基本的には米糠を使用したアク抜き方法と同じです。
ただし、重曹は米糠よりもアク抜きの効果が低めなので、茹でる前に大きめに切り分けることがオススメ。
カットは縦半分や3~4等分などざっくりでOK。
あらかじめカットしておくことで、アクが抜けやすく、また加熱時間も短縮できます。
茹で時間は30~40分ほど、茹でた後はやはりそのまま冷ます「湯止め」をしておきましょう。
米糠・重曹がなくても筍のアク抜きはできる!
ここまで、米糠や重曹を使った筍のアク抜きについてお伝えしました。
けれども、米糠・重曹のどちらも手に入らなくても筍のアク抜きはできます。
米糠・重曹がないときは「米のとぎ汁」または「生米」を入れて茹でるのも1つの手。
ただし生米を使う場合は無洗米ではない「普通のお米」を使用することをオススメします。
必要なのは洗う前のお米に残っている「糠」の部分です。
工程は重曹を使った筍のアク抜きを参考にしてください。
なぜ「米糠・重曹」で筍のアク抜きができるのか?
そもそも、なぜ米糠や重曹で筍のアク抜きができるのか?
それは、筍のアクであるシュウ酸・ホモゲンチジン酸を、米糠・重曹は中和できるからです。
シュウ酸・ホモゲンチジン酸は「酸性」の成分、一方で米糠・重曹は「アルカリ性」の成分です。
酸性の成分はアルカリ性の成分により中和できます。
米糠・重曹はアクの成分であるシュウ酸・ホモゲンチジン酸を吸着させて筍から取り除くため、アク抜きでは筍にしっかり火を通す必要があるのですね。
また、重曹には酸性の匂いに対する防臭効果もあり、臭み消しにも効果が期待できます。
茹でることも大きなポイント!
筍のアク抜きは「茹でる」という工程も大きなポイントとなります。
筍のアクの1つ・ホモゲンチジン酸は酵素の働きによってチロシンから変化していく物質。
つまり、酵素の働きを止めればホモゲンチジン酸は増えず、アクも増えません。
酵素は加熱することで活性を失うため、筍のアク抜きでは「茹でる」という工程が重要なのです。
ここまで、筍のアク抜きについてまとめました。
筍のアク抜きはエグ味を取り除くという「美味しさ」という意味でも、シュウ酸の摂取による結石のリスクを取り除くという「病気予防」という意味でも大切な工程です。
もし、生の筍を購入したり、頂いたときにはすぐにアク抜きをして旬の味覚を堪能しましょう♪
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