夏野菜の代表とも言えるきゅうり。
そんなきゅうりはなぜ「きゅうり」という名前なのでしょう?
きゅうりの名前の由来を知ると、意外なきゅうりの歴史が明らかになりました!
さらに、きゅうりの漢字表記は「黄瓜」「胡瓜」と2通りあります。
この「黄瓜」「胡瓜」はどちらが正しい表記なのか?
今回はきゅうりの名前の由来や正しい漢字表記、歴史についてまとめてみました。
きゅうりの名前の由来
きゅうりの名前は熟した瓜の実が黄色くなることが由来です。
おお!確かに黄色い!
きゅうりはもともと漢字で「黄瓜(きうり)」と表記されていました。
この「黄瓜」が言いやすい「きゅうり」と変わっていったとされています。
いつも食べている緑色のきゅうりは未成熟の状態。
家庭菜園をやっている方なら知っていると思いますが、きゅうりを収穫しないで放っておくと黄色いブヨブヨになります。
本来ならその時点で完熟の食べ頃なのですが、緑の成熟していない実の方が早く出荷できる上に保存性も高いため広く流通するようになりました。
このきゅうりのように未成熟の状態を食べる野菜としては、他に同じウリ科のゴーヤがあります。
きゅうりの漢字「胡瓜」の意味は?
きゅうりの漢字は「黄瓜」よりも「胡瓜」の方が有名ですよね。
この「胡瓜」という漢字はどういう意味を持つのでしょう?
シルクロードを渡って伝来
きゅうりの漢字表記「胡瓜」はシルクロードを渡って中国へ伝来したことが由来です。
そもそも、きゅうりはおよそ3000年ほど前にインドのヒマラヤ山麓で生まれた野菜とされています。
そんなインド原産のきゅうりが中国へ伝来したのは前漢(紀元前206~8年)の時代。
2000年以上前には中国にきゅうりがあったのですね。
この時代の中国では、西方など異民族のことを「胡」と呼んでいました。
つまり「胡瓜」というのは「胡」から伝わった「瓜」という意味だったのです。
「胡瓜」本来の読み方は?
「胡瓜」を『きゅうり』と呼ぶのは日本独自の文化です。
本来、中国では『クークワ』と呼ばれていましたが、日本人には発音しづらく、後半の「瓜(クワ)」をそのまま『ウリ』と呼び『クーウリ』と呼んだのが始まりとされています。
『クーウリ』がいつしか『きゅうり』になったのですね。
ちなみに、きゅうりが日本で栽培されるようになったのは10世紀頃の平安時代。
しかし、この頃のきゅうりは「黄瓜」として完熟したものを食べていたようです。
きゅうりの漢字「黄瓜」or「胡瓜」はどちらが正しい?
きゅうりには「黄瓜」or「胡瓜」という2つの漢字表記がありました。
この2つどちらが正しいのでしょう?
・・・と調べてみたのですが、明確な答えはありませんでした。
どちらも正しいというのが答えで良いと思いますが、現在一般的に使われているのは「胡瓜」の方。
よって、わざわざ漢字で書く必要があるときは「胡瓜」と書くのが無難でしょう。
世界でのきゅうりの名前
日本でのきゅうりの名前を調べてみたので、今度は世界のきゅうりの名前について調べてみます。
英語:cucumber
きゅうりは英語で「cucumber」です。
読み方は『キューカンバー』。
意味はそのまま「きゅうり」です。
また、熟語「as cool as a cucumber」で『とても冷静な・冷静沈着な』という意味になります。
体を冷やす効果があるきゅうりにピッタリの熟語ですね。
フランス語:concombre
フランス語できゅうりは「concombre」となります。
読み方は『コンコンブル』。
ちなみに、ネットで「コンコンブル」と検索すると、日本の猫雑貨が登場します。
イタリア語:cetriolo
イタリア語できゅうりは「cetriolo」となります。
読み方は『チェトリオーロ』。
「cetriolo」には『間抜け・とんま」という意味もあります。
なんだか、きゅうりが可哀想です・・・。
英語では「クールな人」になり、イタリア語では「まぬけ」と言われる不思議な野菜、それがきゅうりでした。
日本におけるきゅうりの歴史
前述したとおり、きゅうりが日本で栽培されるようになったのは10世紀ごろの平安時代でした。
日本で1000年以上もの間、栽培されてきたきゅうり。
しかし、きゅうりが今のように食べられるようになったのはごく最近のことでした。
ここからは、日本におけるきゅうりの意外な歴史についてまとめていきます。
食用ではなく「薬用」だった?
きゅうりの栽培が始まったとされるのは10世紀ごろ。
しかし、きゅうりの種が中国より伝来したのは6~8世紀ごろとされています。
遣唐使が仏教とともに伝えたという説が有力です。
遣唐使は630年から894年まで行われていたので、この期間にはもうきゅうりが日本にあったと言うことですね。
そうして遣唐使が日本に持ち帰ったきゅうりですが、最初は純粋に食べる目的ではなく薬用や宗教目的で使われていました。
きゅうりの薬用使用
きゅうりには
- 利尿作用
- 熱を吸収する性質
があり、真夏の暑さでほてった体を冷ます効果があります。
暑気あたり、いわゆる熱中症を改善させる効果が期待され、昔から重宝されてきました。
また近年では、ナトリウムの排出をサポートするカリウムを多く含むため、高血圧予防にも効果が期待されています。
きゅうりの栄養について詳しくは↓
宗教ときゅうり
宗教目的としては、空海が始めたとされるきゅうり加持が有名です。
夏の暑さに負けず無病息災で過ごすために行われた祈祷のこと。土用の丑の日ごろに行われるものが有名。
水分が多く栄養価が高いきゅうりに、空海が疫病を封じ、病気を治すよう祈願したのが始まりとされる。
他にきゅうり封じ・きゅうり加持祈祷会とも呼ばれる。
このように、きゅうりは食べられてもいましたが薬用・宗教目的としての使用も多い野菜でした。
また、食べる目的でのきゅうりはかつて人気がなかったようなのです。
「まずい野菜」として有名だった江戸時代
江戸時代までのきゅうりは完熟させてから食べるものでした。
だから「黄瓜」と呼ばれていたんだね。
けれども、この黄色く完熟させるきゅうりは、未熟なきゅうりよりも苦くて不人気でした。
その不人気の一因となったのが当時の有力者のお言葉。
水戸黄門として知られる徳川光圀は
「毒多くして能無し。植えるべからず。食べるべからず」
江戸前期の儒学者である貝原益軒は
「これ瓜類の下品なり。味良からず、かつ小毒あり」
※この場合の「小毒」は『苦味がある』という意味です。
と「まずい」「毒入り」とボロクソに評価したのです。
まあ、きゅうりは美味しくなかったのでしょう。
また「きゅうりの切り口が徳川家の葵の御紋に似ている」という理由から恐れ多いと忌避されていたとされています。
このように「まずいし恐れ多い」と避けられていたきゅうり。
しかし、そんなきゅうりに日の目が当たるときがやってきます。
早熟栽培が確立、一気に人気野菜へ!
きゅうりに転機が訪れたのは1800年代半ばごろの江戸時代末期でした。
品種改良が行われ、人為的に暖かい環境に置く早熟栽培が確立。
- 成長が早い
- 味が良い
- 歯ごたえが抜群
と三拍子そろった現在のようなきゅうりの栽培が始まったのです。
このころには、すでに熟す前に収穫されるようになりました。
その後、明治時代には温室栽培がスタート。
太平洋戦争後にはビニールハウスの導入で温室栽培が盛んになり、一気に供給量が増加。
現在では一年中スーパーで見かける人気野菜となりました。
日本におけるきゅうりの歴史は長いものの、今のように美味しく食べられるようになったのは結構最近だったのですね。
まとめ
- きゅうりの名前の由来は
- 「黄瓜」黄色く熟すことから
- 「胡瓜」中国の西方からシルクロードを渡り伝来したから
- 漢字表記「黄瓜」「胡瓜」はどちらも正しいが、現在一般的に使われるのは「胡瓜」
- 日本では江戸時代末期まで積極的に食べられる野菜ではなかった
きゅうりの名前の由来や歴史を探ると、今まで知らなかった意外な事実が分かって面白かったです。
知れば納得のきゅうりの名前・歴史、誰かに教えるきゅうり雑学として参考にしてみてくださいね♪