春が旬の地方野菜「のらぼう菜」。

近年、注目を集めているのらぼう菜ですが、そもそもどんな野菜なのでしょう?
そんなのらぼう菜について気になることを全部まとめました。
のらぼう菜の種類・分類や有名な産地、日本での歴史、名前の由来、栄養価や料理法まで一挙に紹介します。
のらぼう菜は○○の一種!分類について詳しく
のらぼう菜(野良坊菜)はアブラナ科アブラナ属の野菜で、一般的に「なばな」と呼ばれる種類です。
なばなは漢字で「菜花」と表記されます。
つまり「菜の花」の一種です。

春になると土手などを一面黄色に埋め尽くす菜の花は野菜としても優秀。
ややクセがあるものの、柔らかく風味も豊かなのでお浸しや和え物にオススメです。
「菜の花」という名前はアブラナ科アブラナ属の菜花を指す総称であり、品種の名前ではありません。
そんな野菜として食べられる菜の花のうち、有名なのが北関東を中心に食べられる「かき菜」。

かき菜は菜花の若芽を掻き取って収穫することから「掻き菜」⇒「かき菜」という名前の由来を持つ野菜。
3月から4月にかけて北関東では広く栽培され、スーパーなどでもよく見かけます。

のらぼう菜も、かき菜も、どちらも「菜の花」の仲間で一種なんだね。
しかし、のらぼう菜とかき菜にはある明確な違いがありました!
のらぼう菜・かき菜の違いとは?
のらぼう菜はセイヨウアブラナ、かき菜は在来種のアブラナ、つまり品種が違います。
のらぼう菜はアブラナ科アブラナ属の「セイヨウアブラナ種」。
セイヨウアブラナは菜種油(キャノーラ油)の原料となる種です。
一方のかき菜はアブラナ科アブラナ属の「ラパ種アブラナ変種」です。
在来種のアブラナは古くから日本に自生していた種。
弥生時代にはすでに野菜として食べられていたらしく、セイヨウアブラナと同じように油の原料としても使われてきました。
春野菜ですが耐寒性に優れているため、江戸の飢饉では栄養源として重宝されたとのこと。
ちなみに、栄養価を調べるときは
- かき菜:なばな(和種)
- のらぼう菜:なばな(洋種)
でそれぞれ調べましょう。
のらぼう菜は「菜の花」ではない?
のらぼう菜はセイヨウアブラナなので、いわゆる「菜の花」ではありません。
「菜の花」という言葉は在来種のアブラナの和名。
※在来種のアブラナには、他にも油菜、菜種などの和名があります。
つまり、菜の花=在来種のアブラナとなります。
ただ、菜花の一種ではあるため、菜花の総称である「菜の花」の一種と呼んでも差し支えはないでしょう。
のらぼう菜の歴史・生産地・名前の由来をpick up
のらぼう菜は遅くても江戸時代初期には日本で栽培が始まっていました。

栽培しやすく寒さにも強いことから、江戸に起きた天明の大飢饉(1782年~)・天保の大飢饉(1833年~)の際には栄養源となり、当時の人々を飢饉から救ったと言い伝えがあります。

江戸時代から日本人の食生活を支えてきた野菜だったんだね。
外来種なので日本に昔から合った種ではありません。
しかし、どのように日本にもたらされたのかはよく分かっていないようです。
有力な説は、ジャワ島を経由して日本を訪れたオランダ船により持ち込まれたというもの。
このとき持ち込まれたのはセイヨウアブラナの一種・闍婆菜(じゃばな)であり、この闍婆菜がのらぼう菜の原種なのでは?という説となります。
のらぼう菜の生産地
江戸時代から日本で栽培されてきたのらぼう菜ですが、その知名度は全国的には低め。
それもそのはず、収穫後に鮮度が落ちやすいのらぼう菜は、基本的に地産地消される地方野菜として根付いている野菜です。
のらぼう菜の主な生産地は東京都の西多摩地方、特にあきる野市や青梅市あたりです。
東京で主に栽培されてきたのらぼう菜は江戸東京野菜の1つでもあります。
また、青梅市に隣接する埼玉県の飯能市や、飯能市から少し北に離れた比企郡小川町周辺でも栽培されています。
のらぼう菜の名前の由来とは?
のらぼう菜の名前の由来は不明です。
漢字では「野良坊菜」と表記されますが、そもそもどうしてこの漢字が当てられているのかすらよく分かっていないようです。
しかし、漢字表記については、東京・あきる野市にある子生(こやす)神社に、人々を飢饉から救ったことを記した『野良坊菜之碑』が建立されているため、確かであると言えます。
※参考 のらぼう菜・子生神社

「野良」の「お坊さん」ってどういう意味なんだろう?
のらぼう菜の栄養価
ここからは、のらぼう菜の栄養価をまとめます。
<基本>のらぼう菜の栄養価
まずは、のらぼう菜の基本の栄養価です。
栄養素 | 100gあたりの含有量 |
---|---|
エネルギー | 36kcal |
水分 | 88.3g |
たんぱく質 | 4.1g |
脂質 | 0.4g |
炭水化物 | 6.0g |
食物繊維 ―水溶性食物繊維 ―不溶性食物繊維 | 3.7g 0.7g 3.0g |
のらぼう菜は100gあたり3.7gもの豊富な食物繊維が含まれる野菜。
そんな食物繊維のうち、水溶性食物繊維は0.7g、不溶性食物繊維は3.0gと不溶性食物繊維が全体の8割を占めます。
不溶性食物繊維は便秘の予防・改善に効果が期待できる栄養素。
脂質や糖を吸着させ、体外に排出させる働きもあるためダイエットにも効果的ですね。
<ビタミン>のらぼう菜の栄養価
つづいて、のらぼう菜に含まれるビタミンです。
栄養素 | 100gあたりの含有量 |
---|---|
βカロテン(ビタミンA) | 2600μg |
ビタミンB1 | 0.11mg |
ビタミンB2 | 0.24mg |
ビタミンB6 | 0.22mg |
葉酸 | 240μg |
ビタミンC | 110mg |
ビタミンD | 0μg |
ビタミンE | 1.8mg |
のらぼう菜は100gあたり2600μgものβカロテンを含む緑黄色野菜です。
※緑黄色野菜は100gあたり600μg以上のβカロテンを含む野菜を指す言葉です。
βカロテンは高い抗酸化作用や目の保護などに効果が期待でき、ニンジンなどに多く含まれます。
さらに、のらぼう菜は体内で補酵素として働くビタミンB群(B1・B2・B6・葉酸)が豊富!
酵素をサポートする補酵素は代謝アップに欠かせない栄養素。
また、免疫力の向上や美白・美肌効果が期待できるビタミンCも豊富です。

のらぼう菜はビタミンが全体的に豊富ですね。
<ミネラル>のらぼう菜の栄養価
最後は、のらぼう菜に含まれるミネラルです。
栄養素 | 100gあたりの含有量 |
---|---|
ナトリウム | 12mg |
カリウム | 410mg |
カルシウム | 97mg |
マグネシウム | 28mg |
リン | 78mg |
鉄 | 0.9mg |
のらぼう菜は
- カリウム:ナトリウムの排出や利尿作用がある
- カルシウム:骨や歯のもととなる
- 鉄:不足すると貧血になる
といったミネラルを多く含みます。
バランス良くミネラルを含むため、栄養不足の方にもオススメです。
のらぼう菜の料理法
のらぼう菜はクセがなく、灰汁が少ない野菜です。
しかし、根元部分の茎は太めなので、料理に使うときは下茹でしてから使うことをオススメします。

下茹でのポイントは
- 沸騰したら塩少々を加える
- 太い根元の茎からお湯に入れる
- 茎が浸かって10数秒後に葉を入れる
- 葉は浸かったらすぐ水に取り出す
といったもの。
あまり長く茹ですぎると葉先がグチャグチャに溶けてしまうので、サッと茹でることを意識します。
また、茹でてすぐに冷水に取ることで甘みがグッと増すのもポイント。
水気を切ったらそのままお浸しにしたり、炒め物に使ったりなど、なんでも使えますよ。
【まとめ】のらぼう菜について
- のらぼう菜はセイヨウアブラナの一種
- 主に東京の西多摩地方にて栽培されている江戸東京野菜
- 食物繊維やビタミン全般、カルシウム、鉄などを豊富に含む
ここまで、のらぼう菜についてまとめました。
東京の西多摩地方など一部の地域でしか栽培されていないのが勿体ないくらい良い野菜でしたね。
栄養バランスが良く、クセがないので食べやすいのらぼう菜。
見かけたらぜひ買ってみたい野菜ですね。