春になると出回る「筍(たけのこ)」。
この筍には「竹の子」という漢字もありますが、竹の子は使い方として正しいのでしょうか?
また、そもそも「筍」ってどんな食べ物なのでしょう?
それら筍の疑問を、一般的に食べられている筍の種類も合わせてまとめました。
筍(たけのこ)とは
筍(たけのこ)とはイネ科タケ亜科タケ類の地下茎から出る若芽の部分です。

タケ類の地下茎は、春になると芽が出てきます。
このタケ類の芽の穂先が地面から顔を出す寸前あたりに収穫されたものが「筍」です。
したがって、筍の旬は「春」、4~5月ごろとなります。

春のイメージが強い筍ですが、確かに春の野菜だったのですね。
「筍」と「竹の子」の表記の違いについて
筍はタケ類の地下茎から出る若芽なので、文字通り「竹の子」です。
筍を採らずに放置しておけば竹になる、あるいは笹になります。
この2つのタケノコ「筍」と「竹の子」は同じ意味ですが、ちょっとだけ使い方が違います。
その表記の違いは「食用」か「食用ではない」か。
「筍」は食用のたけのこを指し、「竹の子」は植物としてのたけのこを指す、という違いです。

たしかに「筍」は料理名にもよく使われる漢字だよね。
もっと掘り下げると「筍」は収穫後のもの、「竹の子」は収穫前のもの。
「竹の子」はこれから竹になる前段階、文字通り、竹の子どもである状態という意味合いを強く感じますね。
また、少し意味合いが変わりますが「筍」は成長しきっていない食べられるもの、「竹の子」は成長しすぎて食べられなくなったもの、という違いもあるとのこと。
一般的に「筍」は芽が出て10日前後の若芽の状態を指す言葉となります。
「筍」が10日前後の若芽を指すというのは、そもそもの漢字の成り立ちに由来がありました。
漢字「筍」について
「筍」という漢字は『たけかんむり』と『旬』が重なっていますね。
竹の子なので『たけかんむり』が載っているのは、まあ納得できます。
しかし、なぜ『旬』という漢字が使われているのでしょうか?
それは『旬』という漢字には『10』という意味があるためです。
この10は『10日』や『10カ月』、『10年』すべてに当てはまり、全て期間に関係します。

よく「3月上旬」などと言うけど、3月上旬は『3月1日から10日間』を指す言葉なんだね。
「筍」の場合は、発芽から10日前後の若芽、なので『10日』が当てはまります。
よって、竹のうち発芽してから10日前後の若芽の状態を「筍」と表記します。
10日前後を過ぎた状態は「竹の子」なのですね。
野菜や魚などが新鮮に食べられる時期、たくさん収穫される時期、というイメージがある『旬』の意外な一面を知りましたね。
筍として食べられる竹の種類
竹(タケ)と名の付く植物は数あれど、若芽を筍として食べる竹はごく少数。

ここからは、そんな竹のうち、筍として食べられる竹の種類をまとめてみました。
孟宗竹(もうそうちく)
孟宗竹(もうそうちく)はいわゆる「筍」。
肉厚で灰汁が強い、一般的に最も食べられている筍の種類です。
九州から北は福島あたりまでが山地で、旬は3~5月ごろ。
日本の筍と言えばこの孟宗竹ですが、実は在来種ではなく、1700年代に中国からもたらされた種類でもあります。
淡竹(はちく)
淡竹(はちく)は↑の孟宗竹よりほっそりした筍の種類です。
灰汁が少なく淡白な味わいで、味も美味。
しかし、主に中国からの輸入品や、国産では北海道の南部でしか生産されないため出荷量が少ないのが悲しいポイント。
旬は5~6月と晩春あたりと遅めです。
真竹(まだけ)※別名「苦竹(にがたけ)」
真竹は淡竹のようにほっそりした筍の種類で、苦竹という別名通りやや苦味があるのが特徴です。
灰汁は少なめで固めの食感なので炒め物などにオススメ。
旬の時期は5~6月ごろ、淡竹よりもやや遅い初夏あたりに出回ります。
ただし、流通量は少ないため、生産地の直売所などでしか見かけない筍でもあります。
チシマザサ※別名「根曲がり竹」「笹たけのこ」など
チシマザサは東北地方を中心に食べられている筍の種類です。
直径は2cm以内、長さは20cmほどで白みがかった緑色であり、ホワイトアスパラガスに似ています。
細いため柔らかく、灰汁も少ないので料理に使いやすい品種と言えます。
日本が原産の竹で、旬は5~6月ごろの晩春となります。
寒竹(かんちく)
寒竹(かんちく)は日本原産とされる竹の種類です。
名前の由来は、筍が出る季節が晩秋から冬にかけての寒い時期だから。
筍よりも成長後の笹・竹の状態の方が有名で、庭に観賞用として生えているのはほぼこの寒竹となります。
流通量は少ないので稀少ですが、味は絶品らしいとのこと。
正月ごろに食べられるため初物としても人気です。
麻竹(まちく)
麻竹(まちく)は主に中国南部や台湾で生産されている筍の種類です。
これまで紹介した筍は温帯性タケ類に分類されていましたが、この麻竹は亜熱帯性タケ類に分類されるという大きな違いがあります。
この麻竹(まちく)、一見なじみがありませんが、実は『メンマ』の原料です。
ラーメンに載っている、あのメンマです。
メンマは麻竹を乳酸発酵させた発酵食品で、原産地の中国では炒めたり煮込んだりする普通の食材でした。
しかし、なぜか日本ではラーメンの上に載るようになりました。
ある意味、一年中食べている筍として、日本人にとっては最もなじみ深い筍と言えますね。
【まとめ】筍いろいろ
- 筍はタケ亜科タケ類の地下茎から出る若芽の部分
- 竹の若芽なので「竹の子」と表記するのは正しい
- 食用は「筍」、食べないものは「竹の子」と使い分けることも
- 竹の種類は数あれど、筍として食べられている種類は数少ない
ここまで、筍の基本とその種類についてまとめました。
これから気温が暖かくなるにつれ流通が増える筍。
今年は旬の筍を食べてみたいものだと思いつつ、続いては筍の栄養価について調べていこうと思います。