和食の煮物などに使われる「高野豆腐」。
この高野豆腐、そもそもどんな食材なのでしょう?そんな高野豆腐の基本情報をまとめてみました。
さらに、高野豆腐を料理する前に必要な「戻し」についてもまとめています。
高野豆腐とは
高野豆腐(こうやどうふ)とは豆腐の乾物です。

乾物である高野豆腐は、豆腐を冷凍させてから低温熟成し、その後乾燥させて作られます。
冷凍⇒乾燥させる、というのがポイントですね。
高野豆腐の特徴
白い豆腐と違い、高野豆腐は茶色っぽい色味であるのが特徴。
また、乾燥によりカラカラになっているのもポイントです。
白い豆腐は手で持つのも慎重になるほど柔らかく、落としたらグチャグチャになりますよね。
しかし高野豆腐は板のように固く、落としてもカランと音がするだけ。
角は欠けるかもしれませんが形が大きく崩れることはないでしょう。
高野豆腐になるのは○○豆腐
高野豆腐は一般的に木綿豆腐を乾燥させた乾物です。
豆腐には大きく分けて木綿豆腐・絹豆腐がありますが、それらを乾燥させると木綿豆腐はスポンジ状、絹豆腐は湯葉状と食感に違いが出ます。
絹豆腐でも高野豆腐はできますが、しっかりした食感になる木綿豆腐の方が乾物の高野豆腐に向いていると言えますね。
高野豆腐の別名
高野豆腐はその『冷凍してから乾燥させる』という作り方から「凍り豆腐」という別名も持ちます。
そもそも「高野豆腐」という名前は、もともとは関西圏でのみ使用され、それ以外の地域では『凍り豆腐(氷豆腐)』と呼ばれていました。
高野豆腐という名前は、和歌山県にある高野山で精進料理として食べられていたことが由来。
江戸時代に高野山のお土産として人気が出て、そのまま地名を拝借し「高野豆腐」と呼ばれるようになったとのこと。
語呂が良いからか、いまでは「高野豆腐」という名前の方が一般的ですね。
高野豆腐と「凍み豆腐」は別物!?
高野豆腐とよく似た乾物に「凍み豆腐(しみどうふ)」というものがあります。
この凍み豆腐、豆腐を冷凍させてから乾燥させるという高野豆腐とほとんど同じ作り方をされます。
高野豆腐と凍み豆腐、実は伝統製法では乾燥方法が違います。
まずは高野豆腐の作り方をチェックします。
- 日陰に干す
- 夜の寒気に数日間さらす
- 乾燥したら火力乾燥させる
つづいて、凍み豆腐の作り方。
- 豆腐を薄く切る
- 豆腐を稲わらで編む
- 軒先につるす
- 夜間は寒気にさらす
- 昼間は直射日光に当て、凍った部分を溶かす
- 4・5を繰り返し、水分を抜く
たしかに、こうしてみるとけっこう乾燥方法が違いますね。
しかし、現代では大量生産されるため、屋外で作られることはまれ。
屋内での冷凍と乾燥により高野豆腐・凍み豆腐は作られています。
ちなみに、この高野豆腐・凍み豆腐は伝統製法では作り方が異なるものの、第二次世界大戦後に名称を「凍り豆腐」に統一。
そのため、現在は高野豆腐も凍み豆腐も「凍り豆腐」と呼ぶのが正しいとのこと。

別物だったけれど、今では同じものになった、ということでややこしいですね。
高野豆腐の料理法「戻し」について
高野豆腐は和風の煮物に使われることが多い食材です。

しかし、最近では洋風の煮物や炒め物、ソテーなどのレシピも増え、料理のバリエーションが広がっています。
そんな高野豆腐、料理に使う際には「戻し」をする必要があります。
高野豆腐の「戻し」について
高野豆腐は豆腐の水分を極限まで抜いた乾物。
基本的には料理に使う前に「水分が含まれている状態へ戻す」必要があります。
高野豆腐の戻し方は『お湯に30分ほど浸けて水分を中まで浸透させる』というのが基本。
その後、高野豆腐が含んだ水分をしっかり抜くと味が良く染みこみます。
水分を抜くときは大きな面を両手で挟み、垂直に力を入れると高野豆腐が崩れにくいです。
近年販売されている高野豆腐はお湯に浸けて5分ほどで戻せるものも。
また、高野豆腐の中には電子レンジを使った戻し方ができる製品も発売されていて、これはそのままレンジで煮物すら作れます。
さらに、最近では『戻し不要』という画期的な高野豆腐もあります。
これは、戻さずにそのまま煮汁に入れて煮物ができる、という時短食材です。

わたしが使っている高野豆腐も大抵がこの『戻し不要』タイプのものです。
「戻し時間が早い」のは食品添加物のおかげ?
かつて伝統製法で作られていた高野豆腐の戻しは一晩かけて行われていました。
ただ、一晩かけて戻しても柔らかく仕上げるのは難しかったようで、高野豆腐は扱いづらい食材だったとのこと。
しかし、現在では各社の企業努力により高野豆腐の戻し時間は大幅カット、誰が煮ても柔らか美味しく仕上がるようになりました。
その高野豆腐の品質向上には食品添加物の存在があります。
高野豆腐における食品添加物は『戻し時間短縮・柔らかく煮上がる』働きをする「膨軟剤」が使用されています。
この「膨軟剤」、かつては『アンモニア』が使われていましたが、その後『炭酸水素ナトリウム(重曹)』が主流に。
匂いがキツく密閉の必要があるアンモニアに対し、炭酸水素ナトリウムは無臭。
密閉の必要もなく、熱湯で戻す必要もなし。
ただ、たんぱく質を分解し柔らかくする働きにより、柔らかくなりすぎるというデメリットはありました。
さらに、塩分=ナトリウムの摂取を減らしたい、という減塩・健康志向の高まりにより別の方法が開発されました。
それが『炭酸カリウム』の使用です。
炭酸カリウムはナトリウムがカットされているので高血圧などを患う方にも食べやすいのがポイント。
また、炭酸水素ナトリウムを使用した高野豆腐と品質にほぼ変わりがなく、今まで通りに使えたため、すんなり移行できたとのことでした。
現在、販売されている高野豆腐は『炭酸水素ナトリウム(重曹)』か『炭酸カリウム』のいずれか。
炭酸カリウムを使用するのは比較的新しい製法なので、まだ主流は炭酸水素ナトリウムのようです。
Amazon.co.jpで「高野豆腐」をCheckする ≫【まとめ】高野豆腐のあれこれ
- 高野豆腐は豆腐の乾物
- 正式名称は「凍り豆腐」
- 凍み豆腐は伝統製法では作り方が異なる別物
- 料理に使う際は戻しが必要
- 現在の高野豆腐は簡単に戻せるよう炭酸水素ナトリウムor炭酸カリウムを使用している
ここまで、高野豆腐の基本についてまとめてみました。
「豆腐を乾燥させたもの」というおぼろげなイメージは合っていましたが、調べて奥の深さを感じました。
今の高野豆腐が簡単に料理できるのは企業努力があったから!
高野豆腐をうまく活用し献立を彩りたい思います。