夏の郷土料理として一部の地域で親しまれてきた冷や汁。
この冷や汁ですが、実は地域によって大きな違いがあるようなのです。
今回は、そんな冷や汁の地域ごとの違いについて調べてみました!
地域ごとの簡単な作り方も掲載したので、冷や汁を味わいたい方はぜひ参考にしてみてくださいね♪
冷や汁とは
冷や汁とは出汁に味噌を溶いて味を付けた汁物料理のこと。
この説明だと味噌汁のようですが、味噌汁と違い冷たい状態で食べるのが特徴です。
「冷たい味噌汁」を略して『冷や汁』にしたって感じだね。
地域によって異なりますが、読み方は「ひやじる」「ひやしる」どちらでもOKです。
冷や汁の歴史は鎌倉時代に遡る!
冷や汁が日本の歴史において初めて登場したのは鎌倉時代。
「鎌倉管領家記録」という記録に「冷汁」という料理の記載があるそう。
この文献によると、冷汁はごはんに汁をかけて食べるというものでした。
さらに冷汁は僧侶、つまりお坊さんによって全国各地に広まったとされています。
そのうち、冷や汁を作りやすい土地のみにその作り方が受け継がれ、未だに親しまれているとのことでした。
※ただし、この鎌倉時代の文献は出所が不明な点もあるので確実な情報とは言えません。
また、江戸時代の料理書には冷や汁の記載があります。
この江戸時代の冷や汁は、現在の冷や汁とは少々違いますが、少なくともこの頃には冷や汁が浸透していたのは確かです。
郷土3県の冷や汁
冷や汁はある一部の土地に根付いた、いわゆる郷土料理です。
しかし、日本には冷や汁が郷土料理として親しまれてきた土地が少なくとも3県存在します。
お坊さんが全国に広めて、残った地域ってことだね。
その3県に残った冷や汁ですが、県ごとに大きな違いがありました!
ここからは郷土ごとに異なる冷や汁についてまとめていきます。
冷や汁の郷土その1 宮崎県
郷土料理として冷や汁が最も有名と言えるのが宮崎県。
他の土地の冷や汁と比べ、先ほどご紹介した「鎌倉管領家記録」に登場する「冷汁」に一番近いのがこの宮崎県の冷や汁です。
宮崎県の冷や汁では、すり鉢で材料をすりこぎで混ぜ合わせた汁をごはんにかけて食べます。
- すり鉢に焼き魚(いりこ・アジなど)と煎りゴマ、麦味噌を入れすりこぎでする
- よく混ざったら、すり鉢の内側に薄くのばす
- すり鉢を直火にかけ、香ばしく焦げ目が付くまで焼く
- すり鉢にだし汁を注ぎ、溶きのばす
- 豆腐やきゅうり、薬味を入れて冷ます
- 汁が冷えたらごはん(米飯or麦飯)にかける
すり鉢を直火にかけることが難しい場合はフライパンで煎ることもできます。
1の後にフライパンで煎り、煎ったものを再びすり鉢に戻し4の工程から再開できます。
そもそもすり鉢を直火にという工程は本格的すぎるので、一般家庭なら迷わずフライパンを使った方が良さそうですね。
宮崎県の冷や汁の歴史
宮崎県の冷や汁は農家の家庭料理として親しまれてきた料理です。
本来は前日炊いた残ったごはんに味噌と水を加えただけのものでした。
お茶漬けみたいな感じですね。
早朝から仕事をしていた農家の人にとって、簡単に作れて手早く食べられる冷や汁は重宝されました。
また、冷たい汁でごはんをかき込めるので、食欲がない夏でも食べやすいのも嬉しいポイント。
そんな時短料理だった冷や汁は、時代の移り変わりとともに具材が増え、凝った作り方がされるように。
現在では郷土料理として少し高級な料理になってしまいました。
※参考 農林水産省「冷汁・・・宮崎県」
冷や汁の郷土その2 埼玉県
宮崎県と並び、冷や汁が有名なのは埼玉県。
埼玉県の冷や汁の特徴は「冷や汁うどん」としてうどんのつけ汁として食べることです。
この食べ方は埼玉県を中心に群馬・栃木など北関東でも親しまれています。
北関東在住のわたしも冷や汁うどんを子供の頃から食べていました。
- 煎りゴマをすり鉢で好みの加減でする
- すり鉢に味噌を入れさらにする
- きゅうりの輪切りや薬味をすり鉢に加えする
- 冷水を加え、溶きのばす
- 小鉢or椀に分ける
- 茹でて水で締めたうどん・そうめんのつけ汁として食べる
宮崎県の冷や汁と違うのは、焼き魚が入っていないこと。
しかし、すり鉢で混ぜ合わせるという点では一致していますね。
埼玉県の冷や汁の歴史
埼玉県の冷や汁は、余ったきゅうりのゴマ和えをうどんに合わせて食べたのが発祥です。
この埼玉県の冷や汁も夏の農家の家庭料理として受け継がれてきたもの。
- 栄養バランスが良く
- 冷たく食べやすい
- 簡単に手早く食べられる
冷や汁うどんは生活の知恵として重宝されていたのです。
味噌のたんぱく質、ゴマの脂質、夏野菜のビタミン・ミネラル、うどんの炭水化物が一度に摂れる便利な料理ですね。
※参考 冷や汁うどん―Wikipedia
冷や汁の郷土その3 山形県
山形県の冷や汁は、宮崎県・埼玉県の汁ものと異なりおひたしです。
探したのですが、山形県の冷や汁の写真が見つかりませんでした・・・。上の画像はイメージです。
季節の野菜や数種類の乾物を使用して作られる料理で、他の郷土の冷や汁と違い1年を通して食べられます。
また、そのうち正月や結婚式などお祝いの席で食べられることが多いとのこと。
山形県の冷や汁の主な材料は
- 凍り豆腐(高野豆腐)
- 凍りこんにゃく
- 干し椎茸
- 干し貝柱
となり、この乾物と季節の野菜を合わせておひたしにします。
- 乾物を水で戻す
- 干し椎茸・干し貝柱の戻し汁を調味し出汁をつくる
- 2の出汁で乾物を煮る
- 乾物が十分に煮えたら冷ましておく
- 合わせる野菜を茹でる
- 野菜の上に乾物を汁ごとかけ、おひたしにする
山形県の冷や汁の歴史
山形県の冷や汁は、山形県のうち特に米沢市で親しまれてきた料理です。
その発祥は、
- 戦国武将・上杉謙信が陣中料理として部下に振る舞った
- 江戸大名・上杉鷹山が励行した食習慣「一汁一菜」の中で生まれた
などという説があります。
いずれにしても、戦国~江戸時代にかけて当時の米沢藩で食べられていたのが由来のようですね。
※参考 農林水産省「冷や汁・・・山形県」
3郷土の冷や汁まとめ
ここまで調べた3つの地域の冷や汁についてまとめてみます。
こうして見てみると、同じ冷や汁でも食べ方や料理法が全然違うことが分かりました!
家庭で手作りするのも美味しいですが、今ではレトルト食品ですぐに楽しめるものも販売されています。
↑の「冷や汁の素」を購入してうどんで食べたのですが、さっぱりしていながらもコクがあり美味しかったです♪きゅうりの塩もみとともにぜひお試しあれ。
興味がある方は、ぜひこの夏に冷や汁をお楽しみください♪