花粉症は食物アレルギーの原因となる。
という情報を、最近、テレビなどでよく耳にしませんか?
同じアレルギーでもなぜ、花粉症が食物アレルギーを引き起こすのか?
その理由と花粉症と食物アレルギーの関連性、気を付けるべき食べ物についてまとめました。
花粉症が食物アレルギーの原因に?その理由とは?
花粉症の人が食物アレルギーを発症することは、一般的に「花粉・食物アレルギー症候群」と呼ばれます。

この「花粉・食物アレルギー症候群」は、花粉にアレルギーがある方がその花粉とよく似たアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を持つ食べ物を食べた後、体にかゆみや腫れなどの症状が出ることです。
つまり、体内の免疫細胞が特定の食べ物を花粉症のアレルゲンである花粉と勘違い!
そもそも花粉に対する免疫反応も過剰ではありますが、花粉と食べ物を間違え、免疫反応が出てしまうということなのですね。
幼い子どもから大人まで、どんな年齢の方でも発症するのが特徴となります。
「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こすのは、主に果物や生野菜、豆類などに含まれるたんぱく質。
このように、似たような構造を持つ2つのアレルゲンを『交差抗原性がある』と言い表します。
また、症状が出た場合は『交差反応が出た』などと表現されます。
症状が現れるのは主に唇・口の中・喉など、症状はかゆみ・違和感・腫れなどとなります。
「花粉・食物アレルギー症候群」は必ずしも発症するわけではありません。
症状はおおむね軽いものが多いですが、まれにアナフィラキシーを引きおこす可能性があるため注意が必要です。

果物などを食べた後、ひどい症状が現れたときは、早めにアレルギー専門医がいる病院を受診しましょう。
「花粉・食物アレルギー症候群」で交差反応する花粉・食べ物
「花粉・食物アレルギー症候群」で交差反応する花粉・食べ物を、花粉症のアレルゲンごとにまとめます。
スギ・ヒノキ『トマト』
2~5月にかけて症状が出る『スギ花粉』と『ヒノキ花粉』。

花粉症といえばこのスギ・ヒノキ花粉というイメージですよね。
そんなスギ・ヒノキ花粉の方に「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こす可能性があるのは『トマト』。

特にスギ花粉によりアレルギー症状が出る方は注意が必要となります。

ただ、トマトは花粉症の症状を抑える効果がある野菜としても有名ですよね。
実際、トマトに含まれるリコピンにはアレルギー反応を抑える働きがあり、花粉症の症状緩和に効果的です。
抗酸化作用もあるため、生活習慣病の予防にも効果が期待できます。
しかし、トマトが「花粉・食物アレルギー症候群」のリスクを高めるのも事実。
そこでオススメなのが、トマトを加熱して食べる方法。
トマトのたんぱく質は加熱すると不活性化し、アレルギー反応を引き起こしにくくなります。
さらに、加熱しても熱に強いリコピンの働きはそのまま!
普通に生トマトを加熱するのもOKですが、市販のトマトジュースやケチャップなど、トマトを使った加熱済みの加工食品を取り入れるのも便利なのでオススメです。
シラカンバ(白樺)・ハンノキ『りんご・もも・大豆(豆乳)』
『シラカンバ(白樺)』や『ハンノキ』の花粉は1~6月ごろ、主に春の終わりから大型連休にかけて多く飛散します。
そんなシラカンバ・ハンノキ花粉の方に「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こす可能性があるのは『バラ科』や『マメ科』の植物です。

バラ科の植物は、バラなどの花に加え、
- りんご
- もも
- サクランボ
- 梨
など親しみ深いフルーツが多いのが特徴。
また、マメ科では
- 大豆
- ピーナッツ
- もやし(緑豆)
など、これまた食卓に馴染みがあるものばかりです。
このシラカンバ・ハンノキ花粉の症状がある方は、他の花粉症と比べると「花粉・食物アレルギー症候群」になる可能性が高め。
特にマメ科のうち『豆乳』は比較的アレルギー反応が出やすく、過去にはアナフィラキシー症状を引き起こした事例もあります。
シラカンバとは?
シラカンバは白い幹や白い花が特徴の落葉高木で、白樺・シラカバとも表記されます。
花粉の飛散ピークは北海道で4月下旬から5月ごろ。
涼しい高原地帯に自生していて、見た目が美しいことから家の建材や家具に使用されることも多い樹木ですね。
本州に住んでいる方には馴染みが薄いシラカンバの花粉症ですが、白樺が多く生えている北海道では多く見られます。
ハンノキとは?
ハンノキは湿地や水田の畦(あぜ)などに自生している落葉高木で、榛の木とも表記されます。
耐水性があるため湿地帯に多く生えているのが特徴。
高く太く成長する個体もありますが、多くは細長く、見た目は一般的な樹木といった感じです。
ハンノキ花粉は1~6月ごろに飛散します。
飛散量はスギ花粉などと比べると少ないものの、花粉症の発症率は高めとも言われています。
イネ科『メロン・スイカ・キウイ』
イネ科植物の花粉は春から飛び始め、夏にピークを迎え、秋ごろまで飛散が続きます。
そのイネ科のうち、花粉症を引き起こすのは『オオアワガエリ』や『カモガヤ』といった植物。
このイネ科のオオアワガエリ・カモガヤ花粉症の方に「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こすのは主に『ウリ科』の植物です。

ウリ科の植物のうち、フルーツとして親しまれているのが『スイカ』や『メロン』といった夏の果物。
また『トマト』や『キウイフルーツ』などもアレルギーの交差反応が出る可能性があります。
夏の花粉症は、夏に多く食べられるフルーツ・野菜で「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こされるなんて、迷惑が甚だしいですね。
オオアワガエリとは?
オオアワガエリは、チモシー、という名前で牧草として活用される植物です。
大きさは1m以内で、猫のしっぽのような穂が直立するのが特徴となります。
カモガヤとは?
カモガヤは、先ほど紹介したオオアワガエリ(チモシー)と同じく牧草として活用される植物です。
漢字では鴨茅と表記され、英語ではオーチャードグラスとも呼ばれます。
日本では野生化が進み、河原や公園など、至る所に生えています。
イネ科の花粉は植物から数メートルほどと飛散エリアが狭いのが特徴です。
夏場は河原や公園の草地に近寄らないことが一番の予防・対策と言えるでしょう。
ブタクサ『メロン・スイカ・キウイ』
秋の花粉症の代表的な植物として、多くの花粉症の方を悩ませているのが『ブタクサ』。
夏から秋の終わりごろまで、長い期間をかけて花粉を飛ばす厄介な植物となります。
いわゆる、どこにでも生えている雑草で、ギザギザした葉と直立した穂という見た目が特徴です。
そんなブタクサ花粉症の方に「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こすのはウリ科の『スイカ』や『メロン』といったフルーツです。

また、同じくウリ科の『きゅうり』や『ズッキーニ』、バショウ科の『バナナ』なども可能性があります。
ブタクサの花粉は粒子が小さいのが特徴で、気管支や肺まで入り込みやすいというデメリットがあります。
ただ、飛散エリアは狭いので、ブタクサが生えている河原や草地などに近づかなければ予防・対策ができます。
ヨモギ『セロリ・ニンジン』
ブタクサと同じく秋の花粉症の原因なのが『ヨモギ』。
草餅の材料としても有名で、田舎では家の庭に自生することもある親しみ深い植物と言えます。
ヨモギは8~10月の夏の終わりから秋にかけて花粉を飛ばします。
そんなヨモギ花粉症の方に「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こすのはセリ科の『セロリ』や『ニンジン』といった野菜です。

また、スパイス類は『クミン』や『コリアンダー』、ウルシ科の『マンゴー』もその可能性があります。
「花粉・食物アレルギー症候群」は治る?対処法とは?
現状では、花粉症にも、花粉・食物アレルギー症候群にも明確な治療法はありません。

アレルギーそのものを治す治療法はなく、軽減する利用法が中心です。
ただし、花粉症の治療法として期待されている皮膚免疫療法などを花粉・食物アレルギー症候群へ応用する研究が進められているとのことです。
アレルゲンを体内に投与しアレルギー症状の改善・緩和を目指す治療法。
舌の下に投与する『舌下免疫療法』や、皮膚に注射をする『皮下免疫療法』などの種類がある。
「花粉・食物アレルギー症候群」の対処法について
「花粉・食物アレルギー症候群」の対処法として最も効果的なのは、花粉症と交差抗原性を持つ野菜・果物を加熱してから食べること。

「花粉・食物アレルギー症候群」を引き起こすたんぱく質は、加熱により不活性化することが多いため、アレルギー反応が出にくくなります。
ただ、100%アレルギー反応が出ないわけではありません。
フルーツの場合は、加熱してもアナフィラキシーがでる可能性があるので注意しましょう。
【まとめ】花粉症と食物アレルギーの関係性について
花粉症の方が特定の食べ物を摂取したときにアレルギー反応が出るのは、花粉と食べ物に含まれるたんぱく質の構造が似ているから、ということが分かりましたね。
花粉症と食べ物のうち、交差抗原性を有するものの組み合わせをまとめました。
花粉 | 食べ物 |
---|---|
スギ・ヒノキ | トマト |
シラカンバ・ハンノキ | バラ科の果物:りんご・もも 大豆(豆乳) |
イネ科 (オオアワガエリ・カモガヤ) | ウリ科の野菜:スイカ・メロン トマト、キウイフルーツ |
ブタクサ | ウリ科の野菜:スイカ・メロン・きゅうり バナナ |
ヨモギ | セロリ・ニンジン スパイス:クミン・コリアンダー マンゴー |
花粉症だけでもツラいのに、特定の食べ物によってさらに悪化するのは避けたいところ。
上の表を参考に、花粉症の症状悪化を避け、食べるときは加熱するなど対処をし、しっかり対策していきましょう!