冬になると食べたくなる、人気の家庭料理・けんちん汁。
わたしはけんちん汁が子供の頃から大好きです!
そんなけんちん汁ですが、そもそもどんな料理なのでしょう?
また「けんちん汁」という名前の由来も気になります?
さらに、豚汁との違いや簡単に作れる基本レシピについてもまとめました。
けんちん汁とは
けんちん汁とは根菜類を炒めてから煮込んだすまし汁です。
使用する根菜類は地方によって異なりますが、主に
- 大根
- にんじん
- ごぼう
など。里いもやこんにゃく、豆腐などを使用することも多いですね。
食材のうち、特に「ごぼう」はけんちん汁の風味の決め手と言っても過言ではありません!(個人の感想です)
すまし汁とは
すまし汁とはだし汁を塩・しょうゆで味付けした汁物のこと。
『澄まし汁』という漢字を当てる通り、透明に澄んだ汁が特徴です。
すまし汁なので、濁ってしまう味噌は使わないのがポイントですね。
吸物との違い
Wikipediaで「すまし汁」と調べると『吸物』のページに移動します。
しかし、すまし汁と吸物は厳密には似て非なるものであるとのことでした。
酒の肴として供するものは「吸物」、飯と供するものは「汁物」と呼び分けているが、塩や醤油によるすまし仕立ての汁物(すまし汁、おすましなどと呼ばれる)を吸物と混同する場合もある。
吸い物―Wikipedia
↑の説明によると、
- 吸物:酒の肴であり「おかず」として食す
- 汁物:ごはんと一緒に食す
という風に分類されます。
吸物は実(具材)が、汁物は汁がメインと捉えれば良いかな?
けんちん汁の名前の由来
けんちん汁の名前には2つの由来があります。
由来①:建長寺で食べられていた汁物
けんちん汁の名前の由来その1は『建長寺で食べられていた汁物』だからです。
建長寺は神奈川県鎌倉市にあるお寺。
建長7年(1255年)に建てられた寺院なので建長寺という名前なのですね。
その建長寺で修行していたお坊さんが作り食べていた『建長(けんちょう)汁』がなまり、けんちん汁に転じたと言うのが由来その1となります。
ちなみに、全国学校栄養士協議会HPには↓のようなエピソードも紹介されています。
その昔、建長寺の小坊主が豆腐を床に落してグチャグチャにしてしまって困っていると、蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が壊れた豆腐と野菜を煮込み、とてもおいしい「建長寺汁」を作った。これがなまって「けんちん汁」になった。
蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)は建長寺の開山(寺院の創立者)をした中国の高僧。
全国学校栄養士協議会>郷土料理全国マップ>神奈川県 けんちん汁
豆腐と野菜を煮込んだ汁物というのがもともとのけんちん汁のようです。
今とほとんど変わりませんね。
由来②:普茶料理の巻繊(けんちん)
けんちん汁の名前の由来その2は『普茶料理の巻繊』です。
『普茶料理』も『巻繊』もどちらも聞き慣れない言葉だね。
『普茶料理(ふちゃりょうり)』とは、江戸時代の初めに中国から日本へもたらされた精進料理のことです。
普茶料理の特徴は食材をごま油で炒め・揚げたこと。
また、葛を使ってとろみをつけた料理などもあります。
胡麻豆腐が代表的な普茶料理です。
巻繊はそんな普茶料理の1つ。
しかし、一口に巻繊と言っても、
- 根菜類や椎茸、乾物(お麩など)をせん切りにて油・しょうゆで炒め、栗・青菜などとともに油揚げで巻いてから揚げた料理
- 野菜・豆腐を油で炒め、あんかけにした精進料理
- 豆腐と野菜の炒りつけ
など、いくつか種類があります。
ただし、いずれにしても「野菜を油で炒める」という点が共通していますね。
このうち1番目の「根菜類や椎茸、乾物(お麩など)をせん切りにて油で炒め、栗・青菜などとともに油揚げで巻いてから揚げた料理」を汁物にしたのがけんちん汁という説が由来その2です。
※参考 けんちん汁―Wikipedia
けんちん汁と豚汁の違い
けんちん汁と豚汁の違いは肉の有無です。
けんちん汁の名前の由来でも紹介しましたが、けんちん汁は寺院で食べられていた精進料理です。
精進料理とは、仏教の戒めに基づき、殺生や煩悩への刺激を避けることを主眼として調理された料理です。
簡単に言うと、精進料理とは野菜や植物性の食材のみを使って作られた料理です。
殺生が禁止という戒めに基づき、肉食はNGなのですね。
また、お肉だけでなくネギ属の野菜もアウト。
ニラ・ニンニク・ネギ・玉ねぎ・らっきょうなどの野菜は煩悩を刺激すると定められているのでNGになります。
まあ、たしかに美味しくて煩悩も刺激されちゃいますよね・・・。
動物性&ネギ属はNGですが、豆腐や油揚げなど豆製品はOK。
よって、けんちん汁のレギュラーポジションを獲得している豆腐は大丈夫ですね。
さらに使われる出汁も昆布・椎茸といった植物性の食材を使うのが本来のしきたり。
美味しいですが、精進料理ではかつお節・煮干しの出汁は使いません。
そんな精進料理であるけんちん汁とは違い、豚汁は「豚肉」がメインの汁物です。
また、玉ねぎや長ネギなどもたっぷり入っている印象ですよね。
よって、豚肉を使う豚汁は精進料理に当てはまらず、けんちん汁とは似て非なる料理と定義づけられています。
けんちん汁の基本のレシピ
けんちん汁の基本のレシピをご紹介します。
☆今回のレシピは味の素・味の素パークのけんちん汁のレシピを参考にしました。
けんちん汁(2人分)の材料・作り方
では、作り方の工程です。
1 食材を切る
- 豆腐:水切り後、1cm四方のさいの目に
- 大根・にんじん:いちょう切り
- ごぼう:ささがきにして、水にさらしアク抜き
- こんにゃく:手でちぎるorスプーンでちぎり、水から下ゆでする
2 炒める
鍋にごま油を入れ熱し、豆腐以外の食材を炒める。
油が回ったら水と和風出汁の素を加え、沸騰させる。
3 煮る
沸騰したら蓋を閉め、野菜に火が通るまで弱めの中火で10分ほど煮る。
火が通ったら豆腐を加え、温まる。
豆腐が温まったら、しょうゆ・みりん・塩を加えひと煮立ちさせる。
↑ここまでで完成です!
お椀に盛り、仕上げに小口切りにした長ねぎをトッピングすれば本格的ですね。
余った食材は冷凍がオススメ
けんちん汁は用意する食材が多く、カットするのに一苦労。
なのに、食材1つ1つの量は少ないので、どうしても野菜が余ります。
そんなとき、オススメなのは余った食材を冷凍してしまうこと。
にんじんやごぼうは1本丸ごと切ってしまえば、保存にかかる手間がなく楽チンです。
特にごぼうは保存が難しく、アク抜きなど下ごしらえも面倒なので、使うときは1本丸ごと・余ったら冷凍にした方が便利です。
その日に使わない分は↓のようにジッパー付きポリ袋に入れて保存すれば、次回けんちん汁を作るときとっても便利です。
冷凍しておけば、1カ月ほどは美味しく保存できます。
中途半端に野菜を残しておきたくない、という方はぜひお試しください。
まとめ
- けんちん汁は根菜類を炒めてから煮込んだすまし汁の一種
- 名前の由来は、中国の精進料理・普茶料理の巻繊との説が有力
- 豚汁との違いは肉の有無
- けんちん汁は精進料理なので肉は使わない
けんちん汁について調べてみると、幼い頃から食べていたのに知らないことばかりでビックリしました。
もともと精進料理だったなんて、思いも寄らなかったです。
根菜をたっぷり食べられるけんちん汁で、この冬も元気に乗り切りましょう!