炊いたごはんが残ってしまったとき「冷蔵庫」と「冷凍庫」どちらで保存した方が美味しく保存できるのでしょう?
また、ごはんは「常温」や「炊飯器の保温機能」でも保存できる?
特に猛暑・高湿で何でもかんでも腐る夏場はごはんの保存にも気を付ける必要がありますよね。
そんな炊いたごはんの冷蔵・冷凍・常温・保温での保存と、それぞれの保存期間についてまとめました。
炊いたごはんを美味しく保存する方法
炊いたごはんを美味しく保存するなら冷凍保存がオススメです。
炊いたごはんは『デンプンの劣化』により、時間とともに味や風味が落ちていきます。
しかし、炊いたごはんをデンプンの劣化が始まる前に冷凍すれば、劣化が抑えられ、炊きたてに近い状態のごはんの品質を保てます。
ちなみに、ある調査では
冷凍したご飯150g(ご飯茶わん約1杯分)を電子レンジで再加熱した場合、におい、光沢、白さ、粘り、硬さといった項目について、冷凍後3週間程度までは炊きたてのご飯との有意差がなかった
農林水産省 炊いたご飯をおいしく保存するにはどうしたらいいでしょうか。
という報告があります。
美味しく保存するなら炊きたてのごはんをすぐに冷凍するのが良いのですね。
このように、ごはんの美味しさを求めるなら炊いてすぐ冷凍がオススメ。
しかし、冷ましたご飯、つまり冷やご飯は健康に良いというメリットを持ちます。
炊いたごはんの冷凍保存方法
炊いたごはんの冷凍保存方法です。
まず、ごはんを冷凍する際のサイズは1食分ずつにします。
ごはん1食分はお茶碗1杯・おにぎり1個分ほど、重さは150g前後です。
このサイズのごはんを温かいうちに保存容器に盛る・ラップに包み室温下で粗熱を取ります。
ちなみに「粗熱を取る」とは、熱すぎて触れない状態から触っても大丈夫なくらいまで冷ますことです。
ごはんは完全に冷やしてしまうと劣化してしまうのでご注意ください。
粗熱が取れた後は冷凍庫で急速冷凍させます。
急速冷凍機能がない場合は、保冷剤を周りに置いたり上に載せたりすると冷凍をサポートできます。
そして、食べる時に食べる分だけ取り出せばOKです。
- 炊いたごはんを1食ずつ小分けにする
- 粗熱を取る
- 急速冷凍させる
ごはんを冷凍するための専用容器はこちら↓
冷凍ごはんの解凍方法
冷凍ごはんは電子レンジで解凍します。
冷蔵庫や室温での解凍はオススメできません。水分が抜けてしまいマズいです。
電子レンジで解凍する際は「あたため」コースで加熱します。
「解凍」コースは冷凍した生の食材を生の状態に戻す機能なので、加熱してあるごはんをホカホカの状態に戻すのには適しません。
また、ラップに包み冷凍した場合は、包んであったラップを剥がしてから加熱します。
加熱時間はサイズにもよりますが1食分は「500Wで2分」を目安に加熱しましょう。
冷凍ごはんの保存期間
冷凍ごはんの保存期間は1ヶ月以内です。
冷凍すれば腐ることはありませんが、ごはんの品質はどんどん落ちます。
また<炊いたごはんを美味しく保存する方法>の項にて引用した文章にも「冷凍後3週間程度までは炊きたてのご飯との有意差がなかった」と書かれています。
1ヶ月以内、できれば3週間以内が美味しく食べられる期間ですね。
炊いたごはんの冷蔵庫保存はNG?
炊いたごはんを冷蔵庫で保存するのはオススメできません。
炊いたごはんの『デンプンの劣化』は温度が低ければ低いほど進んでしまいます。
そのため、温度が低い冷蔵庫の中ではデンプンの劣化が急速に進行!
粘りのない、ボロボロとした食感の悪い状態でごはんが保存されてしまいます。
なぜ冷蔵保存でデンプンの劣化が起きるのか?
でん粉の劣化は「デンプンの再ベータ(β)化」という現象が原因です。
炊飯前の生のお米に含まれるでんぷんは「βデンプン」と呼ばれる状態にあります。
このβデンプンは『硬い』『水を吸わない』『身体への吸収が悪い』というデメリットしかない状態です。
そんなβデンプンはお米を炊飯することにより「αデンプン」へと変化(アルファ化)。
αデンプンは『柔らかい』『水分を吸いやすい』『適度な粘り気』『身体への吸収が良い』という特徴を持つ、良いことずくめのデンプン。
αデンプンが多い炊きたてご飯が美味しいのもうなずけますね。
しかし、炊いたごはんは冷めていくと再びβデンプンへ戻ってしまいます(再ベータ化)。
再びβデンプンとなったごはんは『硬い』『水を吸わない』『身体への吸収が悪い』に『パサパサ食感』も加わったデメリット満載の状態に。
たしかに、冷蔵庫に入れておいた冷やご飯は硬いしパサパサだよね。
デンプンの再ベータ化が進みやすいのは0~4℃の温度下。
冷蔵庫の冷蔵室はおおむね2~6℃ほどに設定されています。
つまり、冷蔵庫の中はごはんのデンプンが最も再ベータ化しやすい温度と言えますね。
冷蔵庫は温度がごはんを品質劣化させる再ベータ化を促進するため保存に適しない。
冷蔵したごはんを美味しく食べる方法とは?
冷蔵しデンプンが再ベータ化したごはんは、加熱しデンプンをアルファ化させることにより美味しく食べられます。
ごはんは冷めるとベータ化し、温めるとアルファ化するんだね。
しかし、冷蔵したごはんを加熱しても炊きたてご飯ほどの美味しさは取り戻せません。
やはり美味しい状態で保存するならごはんを冷凍するのがベストのようですね。
このお米のデンプンのアルファ化を利用したのが、保存食としても知られている「α米」です。
α米は、まず加水加熱してでんぷんをアルファ化させます。炊飯するということですね。
その後、急速な乾燥処理などの特殊な技術で再ベータ化が起こらないように処理されて作られます。
お湯や水を注ぐだけで食べられ、長期保存が可能なα米は、お米のデンプンが本来持つ力を活かして作られていたのですね。
非常用の備蓄として大人気のα米はこちら↓
※参考 JA北越後 ご飯のおいしさ「でんぷん」の話【JAコラム】
冷蔵ごはんの保存期間
冷蔵ごはんの保存期間は1日以内です。
ごはんの品質劣化などを考えると、最長でも1日以内に食べきるのがベスト。
ただ、味を考えなければ冬場なら3日ほどは食べられます。
炊いたごはんの常温保存
炊いたごはんの常温保存は菌の繁殖のおそれがあるため避けるべきです。
生のお米には「セレウス菌」という菌が付着しています。
このセレウス菌は高温に強く、炊飯しても死滅しない可能性が高いとのこと。
セレウス菌には毒性があり、その毒素を生み出しながら増殖します。
そのため、ごはんを長時間、常温の中放置すると、ごはんの毒性が強くなってしまいます。
セレウス菌は4℃以下の環境で増殖を抑制できるので、安全に保存するなら冷蔵・冷凍保存が望ましいでしょう。
常温ごはんの保存期間
常温ごはんの保存期間は冬場なら半日以内、夏場はNGです。
常温保存はセレウス菌増殖のおそれがあるため推奨できませんが、冬場に半日ほど置くくらいなら問題はないとされています。
半日とは、朝炊飯したごはんをおひつに入れて常温保存し夕飯に食べる、といったくらいの時間です。
そして夏場の常温保存は少しの時間でもおすすめできません。
特に気温が30度を超える真夏は絶対に常温に置いておくのはやめましょう。
また、春・秋は基本的には半日ほどの常温保存をしても問題はないと思われますが、心配な方は冷蔵・冷凍保存がオススメです。
1日以上の常温保存は冬場でもNGと覚えておきましょう。
ちなみに、ごはんを常温で保存する場合は「おひつ」がおすすめです。
ごはんを保存する専用のおひつなら、水分がちょうど良く抜けるため水っぽくならず、温め直すときも楽チンです。
我が家もそうですが、朝に1日分のごはんを炊き夕飯まで持たせる家庭ではおひつは必須アイテムと言えます。良いおひつなら炊きたてのごはんのような美味しさのまま保存できるのでオススメです!
ごはんを保温で保存する場合
ごはんの保温での保存は短時間ならオススメですが、長期間は危険です。
炊飯器の保温機能は炊きたてごはんの温かさをキープできる優れもの。
高温下で保存できるため、逆に腐りにくくなるというメリットもあります。
ただし<炊いたごはんの常温保存>でも説明した「セレウス菌」が増殖するという危険性も!
高温下でも生きられるセレウス菌は保温くらいでは逆に増殖してしまうレベルです。
炊飯後~1・2時間ほどなら保温し続けても美味しく食べられますが、それ以降はセレウス菌の繁殖が怖いので取り出して冷蔵・冷凍保存がオススメです。
また、ごはんを保温し続けると、ごはんの水分が蒸発し食感がパサパサになり、味も落ちます。
メイラード反応により黄色がかって変色することもあるので、保温は短時間にとどめましょう。
保温ごはんの保存期間
保温したごはんの保存期間は1日ほどです。
ただし、保温は保存するための機能ではないので、基本的には保存に向きません。
↑でも説明したように、保温し続けるとごはんの品質は低下するので、せいぜい2時間ほどを目安に食べきるか、別の容器に移し替えましょう。
【まとめ】炊いたごはんの保存
炊いたごはんの保存期間を表にしてまとめました。
冷凍ごはん | 1ヶ月以内 |
冷蔵ごはん | 1日以内 最長3日以内 |
常温ごはん | 冬場:半日以内 春・秋:様子を見て半日以内 夏場:NG |
保温ごはん | 2時間以内 最長1日以内 |
炊いたごはんは(冷凍以外は)総じて日持ちしないということを覚えておきましょう。
ごはんを美味しく保存するなら「冷凍保存」が一番でした。
ただ、その日のうちに食べるのに冷凍するは面倒ですよね・・・。
その日のうちに食べるごはんなら、夏場など常温保存できないときに冷蔵庫へ入れることもやむを得ません。
夏場の常温に置いておなかを壊すよりも、安全性を第一に保存していきましょう!