大晦日の年越しにもおなじみの「蕎麦(そば)」の種類をまとめました。
そもそも蕎麦とはどんな麺料理なのか?蕎麦の歴史をまとめました。
さらに、蕎麦の種類として
- 蕎麦粉の割合
- 提供スタイル(蕎麦料理)
- 日本蕎麦以外のそば
など、種類ごとに蕎麦を詳しく掘り下げていきます。
【基本】蕎麦について
蕎麦とはソバの実を原料とする蕎麦粉を加工した麺です。
穀物としての『ソバ』は、タデ科ソバ属の1年草。
穀物といえば米や小麦などイネ科が多い印象ですが、ソバはタデ科なのでちょっと珍しい穀物でもあります。
ちなみに、ソバの花は↓になります。
白くて可愛い花ですね。
花が咲く季節になると、ソバ畑ではこの白い花が一面に咲き誇り、とてもキレイです。
日本におけるソバの歴史
日本にてソバの栽培が始まったのは5世紀ごろ。
現在でも北海道や長野県など広い地域で栽培されています。
5世紀の日本は古墳時代にあたります。
そんな大昔から食べられていたなんて、日本人になじみ深い穀物だったのですね。
ただし、ソバの栽培が始まってから1000年以上、実に1500年ごろまでソバは雑穀の一種として食べられていて、今のように麺として食べられてはいませんでした。
今でもありますが、当時は蕎麦粥として食べるのが一般的だったようです。
麺として食べられる以前のソバは救荒食物という飢饉に備えて栽培されていた、米などの代用品という扱いでした。
痩せた土地、乾燥した土地でも栽培ができるソバは困ったときの非常食だったのですね。
そのうち、ソバは蕎麦粉を練って団子状に丸めて食べる『蕎麦掻き』として食べられるように。
さらに、蕎麦粉を水で溶かして焼いた『蕎麦焼き』といった食べ方もありました。
蕎麦焼きって、つまりガレットということですよね。
そんなソバを麺といて加工して食べた、と初めて記録されたのは1574年の「定勝寺文書」という文献。
当時の日本は戦国時代真っ盛りです。
文献にはソバを麺の形に加工する『蕎麦切り』として記載されています。
蕎麦切りという名称は今では廃れつつありますが、現在でも蕎麦を蕎麦切りと呼ぶ地域は残っています。
文献に記載されるよりも前に広まったと考えられるので、おおよそ1500年代には麺の蕎麦が日本で誕生したと思われます。
その後、江戸時代中期には庶民の間にも広く浸透していたと文献に書き残されています。
年末の風物詩・年越し蕎麦は1756年の文献に記述が残っており、その頃には江戸を中心に風習があったとされています。
ここまで、蕎麦の基本や歴史についてまとめました。
つづいては、わたしたちが普段食べている蕎麦の種類について掘り下げていきます。
蕎麦の種類「蕎麦粉の割合」編
蕎麦の種類、まずは「蕎麦粉の割合」による種類の違いです。
蕎麦はソバの実を挽いて作られる蕎麦粉に、小麦粉を加えて作られることもあります。
その場合、蕎麦粉の割合によって名称が変わります。
そんな蕎麦粉の割合ごとの蕎麦の名称をまとめました。
十割蕎麦
十割蕎麦(じゅうわりそば)はその名前通り100%(10割)が蕎麦粉で作られた蕎麦です。
つなぎとして加えられる小麦粉がない分、モチモチ食感は控え目。
蕎麦打ちも技術を要するため、十割蕎麦を提供しているお店はけっこうレアです。
蕎麦粉100%で蕎麦の風味が強く感じられるため、蕎麦が大好きな方にオススメの蕎麦となります。
Amazon.co.jpで「十割蕎麦」をCheckする ≫二八蕎麦
二八蕎麦(にはちそば)は小麦粉が2、蕎麦粉が8の割合で配合された蕎麦のこと。
小麦粉の粘り気が加わるためもちっとした食感が楽しめ、のどごしも滑らかになります。
蕎麦打ちも蕎麦粉10割の十割蕎麦よりも打ちやすく、蕎麦粉の風味が控え目なので食べやすいと言えます。
また、この二八蕎麦には『外二八蕎麦』という小麦粉が8、蕎麦粉が2という割合で配合された蕎麦もあります。
この外二八蕎麦と区別するため、蕎麦粉8割の蕎麦を『内二八蕎麦』と呼ぶことも。
さらに、割合の違いでは蕎麦粉が7、小麦粉が3の割合の『三七蕎麦』も、蕎麦粉9割の『一九蕎麦』もあります。
割合が名前で区別されているため、分かりやすいですね。
Amazon.co.jpで「二八蕎麦」をCheckする ≫逆二八蕎麦
二八蕎麦のうち、逆二八蕎麦は主に立ち食い蕎麦屋を指す言葉です。
名前通り、二八蕎麦の逆である小麦粉が8割の外二八蕎麦を指すことも。
また、場合によっては乾麺を指す場合もあります。
立ち食い蕎麦と乾麺では意味が異なりますが、いずれも自虐的な意味合いで使われることが多い名称とのことです。
蕎麦の種類「蕎麦の提供スタイル(蕎麦料理)」編
蕎麦の種類、つづいては「蕎麦の提供スタイル」編です。
同じ蕎麦でもお皿の上に載っていたり、ざるに載っていたり、つゆをかけられていたり。
そんな蕎麦の種類を提供スタイルごとにまとめます。
盛り蕎麦
「盛り蕎麦」は、つゆに麺を付けて食べるスタイルの蕎麦です。
本来、蕎麦はつゆにつけて食べるのが一般的で、この食べ方は普通に蕎麦と言われていました。
しかし、蕎麦麺につゆをかけた状態、いわゆる『ぶっかけ蕎麦』の流行に伴い、名前の差別化を図るために、盛られた蕎麦=盛り蕎麦という名称を付けたとされています。
この盛り蕎麦、当初は普通のお皿に盛られて提供されていました。
しかし、お皿に盛られた蕎麦は、水が滴り、後半に食べる蕎麦がベチャッとなってしまうのが難点でした。
そこで生まれたのが次にご紹介する「ざる蕎麦」です。
ざる蕎麦
「ざる蕎麦」は、文字通り、ザルの上に盛られて提供された蕎麦のこと。
江戸時代に深川にあったお蕎麦屋さんが盛り蕎麦をザルの上に載せて提供したところ、最後まで美味しいと評判になり、他の店も真似するようになって広まったとされています。
盛られた蕎麦、という意味では、現在の盛り蕎麦とざる蕎麦に違いはほとんどありません。
勝手に盛り蕎麦・ざる蕎麦は全然違う蕎麦だと思っていたけど、実は同じだったのか!
あえて違いを付けるとしたら、
- シンプルでリーズナブルな方が「盛り蕎麦」
- 海苔がかけられちょっと高級な方が「ざる蕎麦」
と区別されていることが多いとのこと。
かけ蕎麦(ぶっかけ蕎麦)
「かけ蕎麦」は、器に入れた蕎麦につゆをかけて提供されるスタイルの蕎麦です。
別添えのつゆに浸けて食べられる盛り蕎麦(ざる蕎麦)の対となるスタイルですね。
このかけ蕎麦は1600年代後半の元禄時代に、せっかちな江戸っ子の間で広まった食べ方とされています。
当時の江戸っ子はせっかちが過ぎ、
と思い立ち、蕎麦に直接つゆをかけ始めたのが由来とされています。
つゆを蕎麦にぶっかける、ことから当初は『ぶっかけ蕎麦』と呼ばれていましたが、いつしかシンプルに「かけ蕎麦」と呼ばれるようになりました。
ただし、現在では冷たいつゆをかけて食べられる蕎麦をぶっかけ蕎麦と呼び、温かいつゆをかけて食べられるかけ蕎麦と区別していることが多いです、
ちなみに、かけ蕎麦は茹でた蕎麦を一旦冷水に取り、しめてから熱いつゆをかけるのが一般的。
そんな中茹でたままの蕎麦を器に盛り付け、そこに熱々のつゆをかける『釜揚げ蕎麦』スタイルもあります。
蕎麦と言ってもけっこう自由ですね。
釜揚げ蕎麦だったら洗い物も少なく、提供時間も短縮できるので、忙しいときにオススメですね。
【おまけ】トッピングごとに名前が変わる蕎麦たち
蕎麦は盛り蕎麦(ざる蕎麦)とかけ蕎麦の2種類があることが分かりました。
ここからは、トッピングごとに名前が変わる蕎麦たちについて掘り下げていきます。
天ぷら蕎麦
「天ぷら蕎麦」は、その名前通り、天ぷらが付いている蕎麦です。
盛り蕎麦では別のお皿に盛られていますが、かけ蕎麦だとつゆに浸かった状態で提供されることが多いですね。
細かく刻んだ野菜を揚げた『かき揚げ蕎麦』が代表的ですが、海老天や柏天、ちくわ天などが載っているものも人気があります。
きつね蕎麦
「きつね蕎麦」は、かけ蕎麦に甘く煮付けた油揚げを載せた蕎麦です。
なぜ「油揚げ=きつね」なのか?というのは、きつねの好物が油揚げだからとのこと。
きつねの神様・お稲荷さんが由来である、油揚げにご飯を詰めた稲荷寿司(いなりずし)と同じ名付け理由です。
※ちなみに、正確に言えば稲荷神(お稲荷さん)=きつねではなく、江戸時代の俗信がそのまま広まって同化したと考えられています。また、きつねは稲荷神の使いであるという説もあります。
たぬき蕎麦
「たぬき蕎麦」は、かけ蕎麦に天かすをトッピングした蕎麦のこと。
天かすを載せる麺類を「たぬき」と呼ぶ理由は諸説ありますが、具のない天ぷらを載せる、つまり『タネ抜き』、それが転じて「たぬき」となったというのが有力です。
また、天ぷらの中身がないから騙された!という意味合いで、人間をよく騙していたイメージのたぬきが採用されたとの説も。
その他にも名前の由来は多々ありますが、とりあえず天かすが載った麺類はたぬきと呼ばれます。
とろろ蕎麦
「とろろ蕎麦」は、山芋・長芋をおろした「とろろ」をかける蕎麦のこと。
かけ蕎麦にかかっているタイプが有名ですが、つけ汁に入れて食べるスタイルもあります。
ネバネバのとろろは夏バテ防止にピッタリの栄養がつまっています!
つるっとしたのどごしの良い蕎麦と、元気になるとろろで猛暑を乗り切りましょう。
おろし蕎麦
「おろし蕎麦」は、大根おろしが載った蕎麦のこと。
こちらもかけ蕎麦・盛り蕎麦いずれの食べ方もあります。
いわゆる『越前蕎麦』としても有名で、この場合の大根おろしはトッピングではなく汁の一部として提供されます。
月見蕎麦
「月見蕎麦」とは、かけ蕎麦に卵を割り入れた蕎麦のこと。
卵をその見た目から満月に見立てる食文化は多々ありますが、その一種です。
卵は生卵が一般的ですが、温泉卵のこともあります。
お月見の季節に食べたい蕎麦ですね。
南蛮蕎麦
「南蛮蕎麦」とは、主に長ネギや唐辛子が入ったつゆをかける蕎麦のこと。
鴨肉を使用した『鴨南蛮』が有名ですね。
『南蛮』という名前の由来は
- 長ネギが南蛮と呼ばれていたから
- 南蛮はかつて新しいものを意味する言葉だったから
- 大阪の中心部では長ネギを「なんば」と呼んでいたから
などといった説があります。
鴨肉の旨みが溶け出し、さらに長ネギや唐辛子で味が締まった熱々の汁をかけて食べる蕎麦は冬の風物詩ですよね。
今ではカップ麺でも普通に鴨南蛮蕎麦があるため庶民にも親しみやすい味となっています。
蕎麦の種類「日本と世界」編
ここまで、日本の蕎麦の種類についてまとめてきました。
この日本の蕎麦は、蕎麦の名称を持つもの蕎麦粉を使用していない麺料理と区別するため、蕎麦粉を使用した蕎麦を『日本蕎麦』や『和蕎麦』、『大和蕎麦』と呼びます。
日本では「蕎麦」という名称は『麺料理全般』を指すこともあり、いわゆる蕎麦ではない麺も蕎麦になっています。
ここからは、蕎麦粉を使用していない、日本蕎麦ではない蕎麦について掘り下げていきます。
焼きそば
「焼きそば」は、中華麺を豚肉や野菜と炒め、ソースで味付けをした麺料理です。
味付けはソースが一般的ですが、塩味も人気です。
焼きそばの麺は小麦粉100%の中華麺なので、蕎麦ではありません。
お祭りの屋台やキッチンカー、市販の生麺タイプからカップ焼きそばなど、私たちの生活に馴染みが深い麺類の1つですね。
沖縄そば(ソーキそば)
沖縄県の郷土料理である「沖縄そば」。
「ソーキそば」という名前の方が有名でしょうか?
豚肉が載っている、ボリューム満点の麺料理です。
沖縄そばは蕎麦粉ではなく、小麦粉100%で作られる麺。
ルーツは中国の支那そばにあるとされ、蕎麦というよりはラーメンに近い味わいです。
中華そば(ラーメン)
「中華そば」は、スープの中に中華麺を入れた、いわゆる「ラーメン」です。
麺はやはり小麦粉100%の中華麺です。
今ではラーメンをそばという人は少なくなりましたが、今でも一部の地域でラーメン=そばとのこと。
一応、中華料理ですが、日本のラーメンはもはや日本食と言えるほど独自の進化を遂げ、日本人の食生活を支える存在となっています。
ここまで「蕎麦の種類」についてじっくり掘り下げてみました。
蕎麦に詳しくなれ、年末の年越し蕎麦に向け、知識を身に付けられましたね。
大晦日は年越し蕎麦!ぜひ、蕎麦に思いを馳せながら味わってみてくださいね。
Amazon.co.jpで「年越し蕎麦」をCheckする ≫
蕎麦をいちいちつゆにつけてから食べるのは面倒!