春・夏・秋・冬のどの季節でもお手頃で美味しい通年野菜のじゃがいも。
料理のバリエーションも多く、家庭のお助け食材として高い人気を誇っていますよね。

我が家でもポテトサラダや肉じゃがなどの定番料理で重宝しています。
そんなじゃがいもですが、ソラニンという毒素が含まれていると聞いたことはありませんか?
そのソラニンはどんな毒で何に気を付ければ良いのでしょう?
じゃがいもをこれからも美味しく安全に食べるためにも知っておきたいソラニンの知識をお伝えします!
じゃがいもの毒素・ソラニンとは
じゃがいもに含まれるソラニンは天然毒素です。

ナス科の植物に含まれる毒素で、じゃがいもの他にもホオズキなどにも含まれます。
じゃがいもに含まれる毒素はポテトグリコアルカロイド(Potato Glycoalkaloids:PGA)と呼ばれ、
- α-ソラニン
- α-チャコニン
の2つが該当します。
チャコニンとは?
じゃがいもに含まれる毒素と聞くと「ソラニン」だけが有名です。
しかし、じゃがいもにはチャコニンという毒素も含まれています。
また実は、じゃがいもにはソラニンよりもチャコニンの方が多く含まれます。
このチャコニンはソラニンとは違う成分ではありますが、症状などはほぼソラニンと同じ毒素です。
発生条件や注意点、対処法などはほぼソラニンと一致するので、これ以降もじゃがいもの毒素は「ソラニン」で統一します。
そもそも、どうしてじゃがいもに毒素が含まれるの?
じゃがいもにソラニン・チャコニンといった毒素が含まれるのは、じゃがいもが自らの身を守るためです。
じゃがいもの実(塊茎)は繁殖のために栄養たっぷりな分、外敵から狙われやすいというデメリットがあります。
そのため、外敵にむやみに食べられないように実に毒素を蓄えるようになったと言われています。
外敵から身を守るために毒を含むようになった植物としては、他にユーカリなどが有名ですね。
毒素・ソラニンの中毒症状

じゃがいもの毒素・ソラニンを摂取した場合に現われる中毒症状は以下の通りです。
- 軽傷の場合
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 頭痛
- めまい
- 重傷の場合
- 眠気
- 無気力
- 錯乱
- 神経衰弱
- 視覚障害
- 最悪の場合
- 死亡
ソラニンによる症状は、嘔吐や下痢など他の食品を食べた場合の食中毒と似ていますが、重症になると神経に症状が現われるのでとても危険です。
日本国内でも毎年のように食中毒被害が発生し、中には死亡したケースもあります。
特に危険なのは小学校の調理実習です。
2015年1月22日、奈良県内の小学校で、校内で栽培・収穫したジャガイモを調理・喫食した51名のうち31名に吐き気、腹痛等の症状が出た。なお、残った粉ふきいもを分析したところ、100 gあたり19-39 mg(0.019-0.039 g)のソラニン類が検出された。
農林水産省―ジャガイモによる食中毒を予防するために

親しみやすいじゃがいもがこんなに危険な野菜だったなんて知らなかったですね・・・。
症状が出るまでの期間
ソラニンによる症状は短くて数分後、長くて数日後と現われる時間にバラツキがあります。
じゃがいもを多めに食べた後に↑に挙げたような症状が出たら速やかに病院へ行きましょう。
症状が出るおそれがある摂取量
ソラニンは成人で体重50kgの場合は50mgを摂取すると中毒症状が出る可能性があります。
※体重1kgあたり1mg
また、150~300mgの摂取では死亡する可能性もあるとのこと。
※体重1kgあたり3~6mg
ただし、これは成人だけの場合です。
幼い子供の場合は成人の1/10ほどの量で症状が出るおそれがあります。
小学生でも推定で16.5mg(体重1kgあたり0.42mg)と成人の半分未満の量で症状が現われるとされています。
特に小さいお子さんがいるご家庭ではじゃがいもに注意する必要がありますね。
じゃがいもに含まれるソラニン量
じゃがいもには平均して100gあたり7.5mgのソラニンが含まれるとされています。
ただ、新じゃがいもなど小粒のじゃがいもの場合は含有量が数倍にもなる可能性があるので注意が必要です。
ソラニンはじゃがいものどこに含まれる?
ソラニンはじゃがいもの皮と芽の部分に多く含まれます。
基本的にじゃがいも全体に含まれるソラニンですが、そのほとんどは皮と芽に集中しています。
皮だけで30~80%のソラニンが含まれるので、幼いお子さんと食べる時はできる限り皮を剥いた状態で料理するのが望ましいでしょう。
特に危険な部分は?
じゃがいもの中でソラニンが多く含まれる特に危険な状態を2つご紹介します。
危険その1 緑色に変色した皮

じゃがいもの中でソラニンが特に多く含まれる部分その1は皮が緑色に変色した部分です。
皮の変色は、日光に当たったり傷が付いたりすると起こります。
緑色の部分には100gあたり100mgものソラニンが含まれている場合もあります。
これは緑色の部分を50g食べただけで中毒症状が現われる危険性があるということ!
市販のじゃがいもだと変色しているものは少ないですが、家庭菜園や畑をやっている方からのもらい物のじゃがいもは注意が必要です。
危険その2 芽の部分

じゃがいもの中でソラニンが特に多く含まれる部分その2は芽の部分です。
いかにも食べられないような風貌の芽ですが、やはり食べるのはオススメしません。
芽の部分には少なくとも100gあたり200mgのソラニンが含まれるとされ、少量でも摂取するのは危険です。
じゃがいもを安全に食べる方法

危険な毒素・ソラニンが含まれるじゃがいもを安全に食べる方法をご紹介します。
料理前の安全策
料理前の安全策はいかにソラニンを増やさないかです。
まず、ソラニンは日光に当たると増えるので、直射日光が当たらない冷暗所で保存します。
ただし、冷蔵庫での保存は湿気に弱いじゃがいもにとって傷みの原因になるので夏以外は避けた方が良いでしょう。
保存容器の理想は風通しの良いかご。
かごが無ければ箱に新聞紙を敷くか、穴を開けたポリ袋に入れるという方法があります。
いずれにしても涼しい&暗いところに保存しましょう。
また、購入するときに
- 芽が出ているもの・変色しているものを避ける
- 一度に大量に買わない
といった予防策も大切です。
料理中の安全策
料理中の安全策はソラニンが多く含まれる部分を取り除くです。
変色した部分・芽の部分はその周辺も含めて厚めに切り落とします。
また、小ぶりな新じゃがいもを大量に食べないことも重要!
特に柔らかいため皮ごと食べられる新じゃがいもは危険です。
大人は少量なら大丈夫かもしれませんが、子供がいる場合はできるだけ皮を剥いた状態で料理するのが望ましいでしょう。
また、少し食べてみて苦味・舌のしびれを感じたら危険です。
もったいないですが、食べてしびれるじゃがいもは捨ててください。
ソラニンを減らす方法
ソラニンを減らす方法として
- 加熱する
- 水にさらす
という2つの方法が挙げられます。
加熱する
ソラニンは170℃の温度から分解を始めることが研究結果で分かっています。
ただ、ソラニンの減少に効果があるとされたのは170℃のオーブンで15分間加熱した場合になります。
この場合のソラニン減少率は約76%でした。
同じく170℃でも、5分間油で揚げただけでは2割ほどしか低減しませんでした。
ちなみに210℃で5分間揚げた場合ではソラニンが4割ほどしか減りませんでした。
よって、ソラニンを減らすには170℃以上の高温でじっくり熱する必要があります。
普段の料理ではなかなか大変そうですね・・・。
※参考 農林水産省|じゃがいもの加工調理によるソラニン・チャコニンへの影響
水にさらす
ソラニンなどポテトグリコアルカロイドは水に溶ける水溶性の成分です。
よって、水にさらせばある程度はソラニンを減らすことができます。
ただし、あくまである程度なので完全に0にすることはできません。
皮を剥いても気になる場合に+αとして用いるのが良いでしょう。
まとめ
- ソラニンはじゃがいもに含まれる天然毒素
- チャコニンと合わせてポテトグリコアルカロイドと呼ばれる。
- ソラニンの中毒症状では嘔吐・吐き気など
- 重症化すると神経に作用し、最悪の場合は死に至る。
- じゃがいもの中で特にソラニンが多く含まれるのは「緑色に変色した部分」「芽の部分」である。
- 料理前は冷暗所に保存、料理中は厚めに切り落とすことにより中毒症状の予防につながる。
じゃがいもはソラニンという毒が含まれる、といううっすらとした知識しかありませんでしたが、調べてみると重大な毒素と言うことがわかり愕然としています・・・。
これからはできるだけ皮を剥いてじゃがいもを食べるようにします。
みなさんもじゃがいものソラニンにお気を付けください。
じゃがいものソラニンについて詳しくは農林水産省のHPをご覧ください。