ひな祭りを代表する和菓子と言えば「桜餅」ではないでしょうか?
ピンクの生地であんこを包み、桜の葉が巻かれた、いかにも春らしいスイーツですよね。
そんな桜餅は関東と関西で大きく違う見た目をしています。
なぜ桜餅は関東風・関西風で違うのか、その理由や発祥を調べてみました。
さらに、実は危険?な桜の葉の毒性についても調べています。
3月3日の桃の節句に行われる季節行事のこと。
女の子の健やかな成長を願って祝われるお祭りとして有名。
当日はひな人形を飾ったり、ちらし寿司などでお祝いをする。
詳しくは→『ひな祭りとちらし寿司の関係』
桜餅とは
桜餅とは桜のように淡いピンク色をした和菓子です。
ピンク色の生地or餅であんこを包み、塩漬けした桜の葉を巻いた見た目は春を感じさせます。
また、桜の季節、特にひな祭りの時に食べるイメージがありますね。
「桜餅=ひな祭り」のイメージは間違い?
『ひな祭りに食べる和菓子』というイメージがある桜餅。
しかし、桜餅はひな祭りに食べる和菓子というわけではありません。
ひな祭りには行事食として『菱餅』『ひなあられ』があり、この2つはいわゆるひな祭り専用の食べ物。
女の子の成長・健康を願うひな祭りのお祝いとして食べられるものになります。
一方で、桜餅は春の時期に販売される和菓子。
春の季語でもあり、いかにも春らしい和菓子ではありますが、ひな祭りとは関係がありません!
ひな祭りの時には毎年スーパーなどで桜餅がセールされているので「桜餅=ひな祭り」というイメージがありましたが、あれはスーパーの戦略だったようです。
ただ、たとえひな祭りと関係がなくても、桜餅はひな祭りに合わせて食べるのがピッタリな気はします。
ひな祭りの行事食について詳しく知りたい方は↓の青文字をクリックしてみてください、
桜餅の種類
桜餅には大きく分けて
- 関東風
- 関西風
という2つの種類があります。
有名なのでご存じの方も多いでしょうが、この関東風・関西風がどのように違うのかは意外と知らないのではないでしょうか?
そんな関東風・関西風の桜餅の特徴をそれぞれまとめてみます。
関東風の桜餅
関東風の桜餅は江戸時代に江戸・東京で生まれた桜餅を指します。
この関東風桜餅は、隅田川の向島にある寺院・長命寺の門前にあった山本屋という和菓子屋さんが発祥。
そのため、関西風の桜餅と分けるときには「長命寺」と呼ばれます。
1717年に作られたとのことなので、300年もの歴史がある桜餅だったのです。
この「長命寺桜もち」によると、桜餅の主な客層は隅田川に花見に来た人たちだったとのこと。
その隅田川の土手に落ちていた桜の葉を塩漬けにして、試しに餅に巻いたのがはじまりでした。
桜を見ながら食べる餅ということで桜餅だったのですね。
関東風桜餅の特徴
関東風の桜餅「長命寺」の特徴はそもそもあんこを餅で包んでいないことでしょうか。
あんこを包んでいるのは薄力粉などで作られた生地。
この生地を焼き、あんこを包むor巻くような形で作られています。
感覚としては、餅ではなくクレープに近いスイーツです。
関西風の桜餅
関西風の桜餅は江戸時代に大阪で生まれた桜餅を指します。
関西風桜餅は関東風桜餅「長命寺」の人気を受け作られたもので、その発祥は1830~1840年頃と言われます。
関西風は関東風よりも100年以上後に生まれたんだね。
この関西風桜餅を生み出したのは、現在の大阪市西区北堀江にあった土佐屋というお店と言われています。
関西風桜餅の特徴
関西風の桜餅の特徴は生地に道明寺粉(どうみょうじこ)を使用することです。
道明寺粉とは水に浸したもち米を蒸し、その後に干して乾燥させたものを荒く挽いた粉のこと。
挽く前の状態は「ほしいい(干し飯)」と呼ばれ、かつては非常食として重宝されていました。
この道明寺粉は現在も大阪にある道明寺で生まれたため、この道明寺粉という名前が付けられました。
道明寺粉はオンラインショップでも購入できます。
この道明寺粉に水を吸わせ、蒸し上げて関西風桜餅の生地はできあがります。
できあがった生地にあんこを詰め、形を整え、塩漬けした桜の葉を巻けば完成です。
関西風桜餅もこの道明寺粉を使うという作り方から、関東風桜餅と区別するために「道明寺」とも呼ばれます。
もともともち米だった道明寺粉から作られているので、見た目も味もおはぎ(ぼたもち)とよく似ています。
洋菓子のような関東風の桜餅よりも和菓子らしいのが関西風桜餅の特徴ですね。
<まとめ>関東風・関西風の桜餅の違い
関東風・関西風の桜餅の違いは生地でした。
- 関東風:小麦粉などを焼いた生地
- 関西風:水を吸わせた道明寺粉を蒸した生地
生地が違うため食感は大きく異なります。
ただし『中にあんこを入れること』や『塩漬けにした桜の葉を巻く』などの点は共通しています。
そのため生地は違えど、味や風味はあまり変わらないのが特徴ですね。
桜の『葉』は食べ過ぎ危険?
桜餅に欠かせない存在なのが「桜の葉」。
端午の節句の柏餅とは異なり、桜餅の桜の葉は餅と一緒に食べることができます。
しかし、実はこの桜の葉には『クマリン』という毒性があります。
この『クマリン』とはどんな成分なのか?
また、どのくらい食べると危険なのかについてまとめていきます。
『クマリン』とは
クマリン(coumarin)は匂い成分の一種で、主に桜の葉に含まれます。
桜餅を食べたことがある方なら分かると思いますが、甘いようで苦いような、独特な匂いですよね。
しかし、街中にある桜の木からはあの独特の匂いはしません。
その理由は、クマリンは桜の葉を砕いたり、塩蔵したりなどしなければ、発生しない成分だからです。
クマリンの毒性について
クマリンは肝毒性・腎毒性が懸念される成分です。
- 肝毒性:肝機能を弱らせる毒性
- 腎毒性:腎機能を弱らせる毒性
ただし、クマリンを含む食品を普通の量でたまに食べる程度なら特に問題はありません。
桜餅を1つ2つ食べる程度の量なら気にする必要はないでしょう。
また、クマリンには
- 抗酸化作用
- 抗菌作用
- 抗血液凝集作用
など健康に良い働きもあります。
特にクマリンが持つ「抗菌作用」は桜餅の保存性を高めるために用いられています。
食べ過ぎは良くないものの、品質維持の点でも桜餅には欠かせないものだったのです。
桜の葉ばかりを大量に食べるでもしない限り、クマリンの毒性について心配する必要はなさそうですね。
桜の葉は「剥がして食べる」が正解?
桜の葉に含まれるクマリンには毒性があるものの、普通に食べる分には問題ないと分かり一安心。
けれども、桜の葉は独特の匂いから苦手な方もいるでしょう。
わたしもあまり好きではありません・・・。
そんな桜餅の桜の葉ですが、全国和菓子協会の方がTV番組のインタビューにおいて『食べないこと推奨します』と公言していました!
その理由は、和菓子本来の味・風味を感じて欲しいから。
よって、桜餅の桜の葉を「剥がして食べる」ことは正解、というわけではありませんが、推奨されているので苦手な方は遠慮せず剥がして食べても大丈夫です。
もちろん、桜の葉の風味を味わいたい!という方はそのままガブリとどうぞ。
※参考記事 Jタウンネット 桜餅の葉っぱ、どうする? 全国和菓子協会の見解は「食べないで!」
ここまで、ひな祭りの時期に食べられる「桜餅」についてまとめてみました。
そもそも、ひな祭りに食べられるものではなかった、からはじまり、関東風・関西風や桜の葉の毒性など、これまで知らなかった桜餅について深く知ることができましたね。
今年もひな祭りの時期に店頭を埋め尽くすであろう桜餅。
たまにはそんな桜餅のアレコレに思いをはせながら食べるのも良いかもしれませんね♪