おしゃれな洋食屋さんに出てくるイメージの「ハヤシライス」。
そんなハヤシライスとよく似ている料理としてハッシュドビーフがあります。
このハヤシライスとハッシュドビーフの違いは一体何なのでしょう?
違いを調べてみると驚愕の真実が明らかに!
また、材料にも味にも全く「ハヤシ」要素がないハヤシライスの誕生秘話や名前の由来も調べてみました。
知れば知るほど面白いハヤシライスとハッシュドビーフの関係についてまとめています。
ハヤシライスとハッシュドビーフの違い
ハヤシライスとハッシュドビーフの違いはほぼありません。


え!違いはないの?
ハヤシライスとハッシュドビーフの違いについて、ハウス食品のHPを見てみると、
一般的には、諸説あり、はっきりした答えはないようです。
ハヤシライスとハッシュドビーフには明確な違いはなく、どちらも、“ 薄切りの牛肉と玉ねぎを使ったライスメニュー ”です。
ハウス食品―ハヤシライスとハッシュドビーフの違いを教えてください。
とありました。
さらに、ダメ押しとしてグリコのHPを確認してみると
ハッシュドビーフとハヤシライスの違いは明確ではありません。
グリコー豆知識コーナー
と掲載されています。
ハウス食品&グリコいずれも『明確な違いはない』と言い切っていますね・・・。
ハヤシライスソースやハッシュドビーフルウを販売する大手2社が同じことを言っている以上、ハヤシライスとハッシュドビーフに違いはないようですね。
あえて区別するとしたら・・・
ハヤシライスとハッシュドビーフをあえて区別するとしたら対象年齢の違いで分けられます。
ハウス食品・グリコの両方のHPに「ハヤシライスは甘みがあるトマトソース味」「ハッシュドビーフはベースがデミグラスソース」と記載されていました。
簡単に違いを分けると
- ハヤシライス:子ども向け
- ハッシュドビーフ:大人向け
といった感じですね。
※参考
ハウス食品 ハヤシライスとハッシュドビーフの違いを教えてください。
ハヤシライスとハッシュドビーフに違いはないというのが答えでした。
しかし、そもそもハヤシライス・ハッシュドビーフとはどのような料理なのでしょう?
ハヤシライス・ハッシュドビーフとは
まず、ハヤシライスとは薄切りの牛肉と玉ねぎをデミグラスソースで煮込んだものをごはんの上にかけた料理です。
そしてハッシュドビーフとは薄切りの牛肉と玉ねぎをデミグラスソースで煮込んだ料理となります。

確かに2つに明確な違いはありませんね。
唯一の違いはごはんの上にかけて食べるかどうか。
しかし、ハッシュドビーフをごはんにかけて食べたらハヤシライスと見なされます。
やはりハヤシライスとハッシュドビーフは同じ料理のようですね。
けれども、なぜハヤシライスとハッシュドビーフは同じ料理なのに違う名前なのでしょう?
その秘密を探るため、ハッシュドビーフの歴史から調べていきます。
ハッシュドビーフの歴史
ハッシュドビーフはイギリスなど欧米の家庭料理として誕生した料理です。
18世紀にはハッシュドビーフとよく似た牛肉の煮込み料理のレシピが多数確認されています。
日本でハッシュドビーフが初めて紹介されたのは1888年に刊行された料理書「軽便西洋料理法指南: 実地応用一名・西洋料理早学び」。
明治21年、いまから140年ほど前のことですね。
その料理書に載ってたのは「ハヤシビフ」という名のローストビーフとデミグラスソースを使った料理。
まさかのここで「ハヤシ」という言葉が登場します。
1909年には「ハヤシビーフ」という名前で主婦向けの本「女道大鑑」にレシピが掲載されました。
1912年刊行の「洋食のおけいこ」という本にも同様に「ハヤシビーフ」のレシピが載ってることから、ハッシュドビーフは日本で「ハヤシビーフ」と呼ばれていたことが分かります。
そこからライスにかけて食べるようになり「ハヤシライス」として定着したのでしょう。
ハッシュドビーフがハヤシライスになった理由
ヨーロッパ生まれのハッシュドビーフが日本でハヤシライスと呼ばれるようになった理由は諸説あります。
しかし、最も有力だと思うのがハッシュドビーフの『ハッシュド』が『ハヤシ』に変化したと言う説です。
これは『ハッシュド』がハッシ・ハイシと訛り、最終的に『ハヤシ』になったというもの。
これには同じくハッシュドという言葉が使われる「ハッシュドポテト」がかつての日本で「ドライハヤシ」と書かれていたことからも有力とされます。
さらに、英語表記「hashed」の原型「hash」の意味はこま切れ肉料理というもの。
この「hash」の意味と、日本の古語で『細かく切る』という意味を持つ「はやす」が合わさり「ハヤシ」となったともされています。
ただ、西洋料理が日本に入ってきた当初の明治期にはハッシュドビーフとハッシュドポテトが合体したような不思議な料理もあったとか。
同じような名前なので混乱してしまったのですね・・・。
そんなこんなでハッシュドビーフはハヤシライスという名前で広まり、その後浸透するにつれ日本独自の味つけ・材料などで発展していきました。
もともとはヨーロッパの料理ですが、日本で食べられているハヤシライスはほぼ日本オリジナルの料理となったのですね。
ハヤシライスの発祥について

ハヤシライスは欧米のハッシュドビーフが原型となり日本で独自に発展、新しく生まれた料理です。
日本で伝わるにあたり、ハヤシライスとともにハッシュドビーフも変化。
ハッシュドビーフといえども、現在では欧米のものと大きく違う調理になっています。
そんなハヤシライスの名前には、ハッシュドビーフからハヤシライスに変化したという説以外にもいくつか面白い説があります。
ハヤシさんが作った説その1
最も有名なのが、丸善の創業者である早矢仕有的さんが作ったという説です。
※名前の読み方は早矢仕(はやし)有的(ゆうてき)さんです。
この早矢仕有的さんが作った「肉と野菜のごった煮」が評判となり、いつしかハヤシライスと呼ばれるようになったというもの。
ただ、この料理をどこでどんな人たちに振る舞っていたかは定かではなく、さらに当時はデミグラスソースがなかったのでしょうゆや味噌ベースのスープだったのでは?とも言われています。
ハヤシライスと全然関係ないですが、丸善って今は本屋さんですよね。
ハヤシさんが作った説その2
上野精養軒で料理人として働いていた林さんが作ったという説です。
賄い用のメニューがいつしか店に出されるようになり、ハヤシライスが誕生したというもの。
ただ、この説はほとんどガセネタとして扱われています。
ハヤシさんが作った説その3
横浜に住んでいた林さんが好きだったメニューという説です。
洋食屋に行くたびに「カレー粉抜きのカレーライス」を頼んでいた林さん。
そのカレーライスは「林さんのカレーライス」と呼ばれ、いつしか「ハヤシライス」となりました。
という説ですが、あまりにも作り話じみているのでガセネタとして扱われています。
食べると早死にする説
ハヤシライスが広まった当時の日本では、牛肉を使った料理はとても珍しいものでした。
珍しいというか、それまで獣肉を食べることは避けられていました。
そんな未知の獣肉料理だったため、ハヤシライスには「食べたら早死にする」という不名誉なウワサが流れてしまったのです。
そこから「早死ライス」となり、「ハヤシライス」になったという説です。
また、この説には「肉食ばかりだと不健康で早死にする」というウワサもあったようです。
どちらにしても、ハヤシライスにしたらとばっちりですね。
まとめ
- ハヤシライスとハッシュドビーフは同じ料理。薄切り牛肉と玉ねぎをデミグラスソースで煮込み作られる。
- ハッシュドビーフが日本に伝わるときに「ハッシュド」が「ハヤシ」に訛ったことでハヤシライスに変化したと考えられる。
- ハヤシライスの名前の由来は他にもハヤシさんが作った説・早死にする説などがある
別々の名前で売られているものの、ハヤシライスとハッシュドビーフに違いはなく同じ料理と分かりました。
全然違う料理のイメージだったので意外な結果となりました。
これからハヤシライス&ハッシュドビーフを作るときは、気分によって呼び方を変えてみようと思います。