なすは英語でeggplantと呼ばれます。
なす=eggplantは有名ですが、何故なすは「eggplant」なのでしょう?
また、和名・なすはどうして「なす」と呼ばれるようになった?
漢字「茄子」の意味とは?
などなど、なすの名前についてあまねく調べてみました!
なすの英語名が「eggplant」である理由
なすの英語名は「eggplant」、読み方は『エッグプラント』となります。
直訳すると『egg=卵』の『plant=植物』です。
なぜ、なすが『卵の植物』と言われているのか。
その英語名の理由は、かつて一般的だったなすが白色だったからです。
おお!本当に白いね!確かにこの見た目だと『eggplant』って名付ける理由も分かるね。
中央左の真っ白な卵がガチョウの卵です。たしかに、上の画像のなすと似ていますね。
このなすはいわゆる「白なす」と呼ばれる品種で、紫色のなすよりも皮が硬いのが特徴。
さらに果肉も硬め。しっかりした食感が持ち味です。
白なすは皮・果肉が硬い分、煮崩れしにくく煮込み料理に向いています。
また、アクが少ないので食べやすいのもポイントですね。
普通のスーパーではあまり見かけませんが、見かけたらぜひ食べたいなすの品種です。
実はイギリス・アメリカで名前が違う?
なすは英語で「eggplant」とご紹介したばかりですが、なすの英語名には別の名前もあります。
同じ英語圏であるイギリスでのなすの呼び方は「aubergine(オーバジーン)」。
また同じように、フランスでは「aubergine(オーベジーヌ)」と呼ばれます。
このイギリス・フランスでのなすの名前はアラブ語が由来となっています。
アラブ語がなすの名前の由来となったのはなすがインド原産の野菜で、インドからアラブ→地中海の国々→ヨーロッパ各国に伝わったため。
聞き慣れない名前ですが、響きがちょっとカッコいいですね。
なすはどうして「なす」という名前なの?
なすの英語名についてご紹介しましたが、次は日本語の「なす」についてお伝えしていきます。
なすが「なす」いう日本語名(和名)になったのはいくつかの説があります。
- 実が良くなる『成す』『為す』
- 中酸味の略
- 夏に実がなる『夏実』
- 女房詞
ここからは、そんななすの和名の由来について1つ1つご紹介していきます。
実が良くなる『成す』『為す』
なすの和名の由来その1は「実が良くなる『成す』『為す』」です。
なすを栽培したことがある方ならご存じでしょうが、なすは一度実がなれば次から次へと新しい実が収穫できる野菜です。
家庭菜園のなすでも、最盛期には食べきれなくなるほどに収穫できるほど実が良くなります。
そんな「実をよく成す(為す)」から「なす」と呼ばれるようになったという説です。
また、有名なことわざ『一富士二鷹三茄子』で3番目になすが使用されているのは、なすを『成す』とかけているため、とのこと。
成すには『ある行為を行う・新たに始める』という意味があるので、新年を祝福するのにピッタリな言葉と言えますね。
中酸味の略
なすの和名の由来その2は「中酸実(なかすみ)の略」です。
これは平安時代に編纂された辞書「和名類聚抄(和名抄)」に書かれていたた言葉が由来となっています。
この「和名抄」には
「茄子は、中酸実 (なすび)の義なり、その実少しく酸味あればなり」
と紹介されています。
この「中酸実=なかすみ」から『か』がなくなり「なすみ」→「なすび」と転じたとの説です。
なすの実に少し酸味があることから「中酸実」と呼ばれるようになったとのこと。
なすを食べて「酸っぱい」と思ったことはなかったけど、昔は酸っぱかったのかな?
なすはいつから食べられていた?
なすの名前の由来は平安時代の辞書「和名抄」によるもの、と説明しました。
日本で「なす」という言葉が初めて登場したのは東大院正倉院の古文書。
その古文書には「天平勝宝二年(750年)茄子進上」と書かれています。
また、別の正倉院文書には「天平六年(734年)茄子十一斛、直一貫三百五十六文」ともあります。
750・734年はいずれも奈良時代。
つまり、最低でも奈良時代には日本でなすが食べられていました。
ただし、かつてのなすは高貴な人しか食べられない貴重な野菜でした。
栽培技術の向上により、江戸時代ごろからは庶民にも親しまれる野菜になっていたとのことです。
「酸実」とは
ちなみに「酸実(ずみ)」とはバラ科リンゴ属の落葉小高木のこと。
春には白色の花を咲かせ、秋にはサクランボのような実を付ける植物です。
別名は「小林檎(こりんご)」。
夏に実がなる『夏実』
なすの和名の由来その3は「夏に実がなる『夏実』」です。
夏から秋にかけて、と旬が長いなす。
そのうち、収穫の最盛期と言えるのが真夏。
そんな夏に実を付けるため『夏実(なつみ)』と名付けられ、それが転じて「なすび」となったという説です。
また、この「なすび」は漢字で「奈須比」と表記されます。
この「奈須比」は先ほどもご紹介した「和名抄」や同時代の「本草和名」にも記載されている名前。
「なすび」は現在でもなすの別名として親しまれていますが、かつては「なすび」の方が一般的な名前だったのですね。
女房詞
なすの和名の由来その4は「女房詞」です。
女房詞(女房言葉)とは、室町時代の初めごろから使われていた言葉で、宮中・院に使える女中が隠語的に使っていた言葉のこと。
言葉の初めに「お」を付けて丁寧さを表す女房詞が有名ですね。
かつお節を「おかか」って呼ぶのも女房詞の1つなんだって。
そんな女房詞でなすは「おなす」と呼ばれ、次第に「お」を取った「なす」が一般に定着していったとされています。
移り変わりを見ると
- 奈須比(なすび)
- おなす
- なす
となります。
なすの名前1つとっても、こんなに歴史が深いなんて面白いですね。
なすの漢字「茄子」の意味とは
なすは漢字で「茄子」と表記されます。
この「茄子」は中国から伝わった漢字で、そのまま『なす』を意味します。
中国では「茄」は植物、「茄子」は果実を指す言葉とされています。
ちなみに、中国で「茄子」は『チェズ』と呼ばれます。
麻婆茄子を『マーボーチェズ』って発音するね。
また、この『チェズ』という発音から、写真を撮るときに日本で「ハイチーズ」と声かけするところを「ハイチェズ(茄子)」というとのこと。
チーズとチェズ、確かに音が似ていますね。
<まとめ>なすの名前あれこれ
- eggplant:白なすの見た目が卵に似ているため
- イギリスではaubergine
- なす(和名)
- 実を多く『成す(為す)』
- 中酸実(なかすみ)の略
- 『夏実(なつみ)』→『奈須比(なすび)』
- 女房詞で『おなす→なす』
- 中国語表記の漢字では『茄子』
ここまで「なすの名前」についてまとめてみました。
同じ英語圏でも2通りの呼び方があったり、和名の由来は4通りもあったりと、なすの名前は奥深いですね。
知ればもっとなすが好きになる?そんななすの名前特集でした。